02
 

「よろしく、名字さん」
「え、あ、よ、よろしく…」

なんでわたしが白石くんの隣に…眩しいっていうか、なんかキラッキラしとるもん。一日二回告白されるお方ってこんなにも輝いてるもんなん?
「いいなー名前」「うらやましすぎるわー」今すぐかわってあげますけど!?
幸いわたしは得をする性格なんか、既にクラスの女の子とは大分仲が良くて、白石くんの隣になったことで妬まれたり舌打ちをされたり、とかそういうことは今のところなかった。良いクラスでよかった…!

ちらりと隣を見ると眩しいくらいのお顔がある。これ…毎日こんな眩しいんかな?綺麗な顔してはるなあ…、でも1組の松岡くんがわたしはタイプやけれども。

「なあなあ」
「え?」

もしかしてわたしに話かけてるんかな。一応自分を指さしてみると、「名字さんしかおれへんよ」と少し含み笑いでそう言われた。ああ恥ずかしい、今きっとめっちゃ間抜けな顔してたわたし!

「名字さんって可愛いやんか?」
「…はい?」
「まだ入学してちょっとやのに、友達いっぱいおるし、よう笑うとるし」
「え、な、何?」

何が言いたいんやろうこのイケメンさん。わたしを煽てて喰ってやろうとか、そういうのやないよね?突然人のことを可愛いとかよく笑うとか、確かにお友達には恵まれとると思うけど(白石くんの隣の席になってもイジメられたりせえへんし)、それを何で白石くんが知っとるん?やって、今、初めて話したのに。

「名字さんってモテるやろ?」

その瞬間後ろから意表を突かれて突き飛ばされたみたいに前につんのめりそうになった。な、な、なんですと!?あなたがそれを言うって、どんだけ無自覚美少年やねん!そっくりそのままお返しするよ白石くん!とは口には出せずに、とりあえず「わ、わたしがモテるわけないやん!」と否定しまくっておいた。

「いや、正直に言うてええんやで。ちゅーか彼氏おらんの?」
「お、おらんおらん!そういう白石くんこそ、やんか」
「俺?俺はまあ…否定はせんなあ」
「ふは、せんのんや」
「俺が全然モテへんよ、とか言うても嫌味に聞こえるやろ?」
「う、うん、たしかに。自分のことよくわかってるんやねえ」

この人は無自覚美少年なんかやなかった。いい意味でここまでストレートにモテます宣言してくれた方がわたしとしては気持ちが良かった。これで、俺なんか全然モテへんよー、とか言うてきたらほんと、白石くんの言う通り嫌味にしか聞こえへん。白石くんのイメージが、少し変わった瞬間やった。

「彼氏ほしいとか思わんの?」
「うーん、どうかなあ」

笑って誤魔化したけど、えらくグイグイくる人やなあ。人のテリトリーに踏み込んでくるのが上手な人っていうんは、白石くんみたいな人のことやと思う。人見知りもなくやすやすとそういうちょっと踏み込んだ質問をしてこられるのは、多分顔がいいからだろう、なんて思ってしまう。変わったイケメンさんや。

「俺みたいんなんとか彼氏にするん、どうなん?」
「えっ」

びっくりして雛鳥みたいな小さな声しか出んかった。な、な、な、何を突然!?この人の思考回路が全然わからないついていけない!だだだだって、白石くんと話すのは今日が初めてや。これが席替えして二週間とかで、すごく白石くんと仲良くなれてるわたしに質問してくるんやったらわかる、けど!何やこのフランクさ!めっちゃ慣れてそうでなんか……引く!!白石くんはニヤニヤしながらわたしの返事を待っている。わたしがなんて答えると予想してるんやろう。もう全然白石くんという男がわからない。こんな人には初めて会ったから。

「あんな、白石くん」
「?」
「わたし、B専やねん」

「イケメンさん苦手やからなあ…。白石くんの顔もかっこいいとは思うねんけど、タイプやないんよ」

そう言うてしまった瞬間、白石くんのニヤニヤしてた顔が、一瞬にして真顔にかわった。真顔…っちゅーより、目を丸くして鳩が豆鉄砲喰らってしもた顔に近い。あれ、白石くんって鳩に似てる?白い方の。

「B専って気づいたんは、実は最近なんよ。わたしはかっこええと思てるからね?でも…違うんやて。不細工さんなんやって、わたしがかっこええと思ってきた人」

気づいたというより正確には気づかされたんやけど。(友ちゃんに)
わたしがB専ということを友ちゃんは瞬く間に周りの女子に広めてしまい、おかげで今ではすっかり不細工専門学校一年生とか呼ばれてしまっている。全くもって失礼なあだ名やけど、そのおかげでみんなと馴染めたようなもんやし、まあええか、くらいの軽い気持ちで流してやっている。やっているのだ。

「白石くん?聞いてる?」
「え?あ、あぁ、いやすまん、はは、そーなんや」
「うん。あ、白石くんも心の中でB専女とか思ってる?」
「思うてへんよ、ちゅーか何それあだ名?」
「や、なんでもないなんでもない」

そこから白石くんとは打ち解けてしまって、それなりに仲良くなってしまった。こんなイケメンさんとわたしなんかが恐れ多い、とつくづく思う。


それからしばらく経ったある日、何故かわたしがクラスの女の子に呼び出されるという奇妙な事件にあってしまった。その子はクラスで言うと少し大人しめの女の子で、入学してしばらく経っているけどわたしが話すのはこれが初めてや。名前は…確かそう!坂下さんや。

「な、なんでしょうか?」

女の子に呼び出されるのはあまりいい気がしないというか、怖い。やって普通友達には呼び出されたりせえへんし、いい話なんてほぼありえへんから。

「あ、あの、名字さんって、白石君と仲良いでしょ」
「え、そ、そう?そうでもないよ?」
「少なくとも、私よりは仲良いから…」
「……えーと、それ、で?」

「私、白石君に告白したいの!」

小さい声を少し荒らげて言う坂下さんは、とっても乙女な顔をしている。眼鏡をかけて一見地味に見えてしまうけど、告白なんて勇気あることも…え、ていうかなんでそれわたしに言うんやろ?

「え?」
「だから、名字さんに、協力…っていうか、その、呼び出してほしくて」
「…あー…」

なるほど、そういうことですか。うむ、なるほど。そりゃ呼び出すの恥ずかしいもんね。呼び出したことないけど。でも本音を言うなら、自分で呼び出せば?と言いたい。だってなんで全く関係ないわたしが、少し白石くんと話すだけのわたしが、そんなことに協力せなあかんの?自分で言わなきゃ意味ないよ。…とはこの大人しそうな坂下さんには絶対に言われへん言ったらあかん!傷ついて、泣いてしまう。

「わ、かった」
「ほ、本当…!?」
「うん、でも、呼び出すだけ」
「うん…うん!十分です、ありがとう…!」

両手をがっちりホールドされて、意外とそんなに大人しい子でもないのかも、と思ったりしたけど、とりあえず明日の昼休みに、という話になった。わ、わたしにできるんやろか…?




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