07
 


名前と初めてひとつになった日から、俺ってこんなに性欲強かったんかいなってくらい、名前を求めとる。言うても、そない毎日毎日求めてるわけちゃうけど。(ほんまは毎日したいけど)(場所がないんや、場所が)

テニスでインハイ行って、優勝は出来んかったけど、全国三位という好成績で俺の夏は終わった。
俺ら三年生がテニス部を引退してからは、勉強勉強勉強。勉強ばっかりや。誰がって、俺がやないねん。名前がや。そら一応受験生やからわかるんやけど。わかるん、やけどな!?なんでそんな急にエンジンかかったみたいに勉強やり始めんねん。俺は、もっと、名前とヤリ…イチャイチャしたいのに、なんや最近の名前はホンマにそっけないっちゅーか。テニスしてへん俺には興味ないとか?んな阿保な。名前は俺にベタ惚れやから、そない阿保な話ない。あったらあかん。


「名前!秋と言えば何やと思う?」
「…食欲、スポーツ、読書?」
「ちゃう!ちゃうねん!」

性欲の秋!とでかい声で言うたら、名前の隣の席の謙也が教科書で思っくそ俺の頭をはたきよった。

「何すんねん謙也、しばくぞ」
「なんで俺がしばかれんねん。ほんでお前は何をでかい声でぬかしとんねん恥ずかしくないんか!」
「恥ずかしい?なんでや?」
「名字、お前も苦労してるんやなあ」
「うん、たいへん」

何を二人で意気投合しとんねんこのブス専二人は。(「「ブス専ちゃうし!」」)
謙也と名前が最近えらい仲良い気がすんの気のせい?気のせいやんなあ?ちょっと隣の席やからって調子乗ってんやないで、謙也。(「全然乗ってへんけどな!」)

「名前、最近勉強ばっかりやん」
「蔵、わたしら受験生なんやで」
「わかっとるわそんなん」

それでも、やっぱイチャイチャしたいやんか、抱きたいやんか。
まあでも、今名前はなんや必死になって勉強しよるし、彼氏の俺は多分、応援したらなあかんのんやと思う。色々思うことはあるけど、一先ず集中さしたらなあかんのんかな、やっぱ。
ローテンションのまま俺は教室を出るべく名前から離れた、んやけど。俺のセーターだけが掴まれて、伸びた。

「なんでわたしが、秋になって、急にがりがり勉強しだしたんやとと思う?」
「…え」
「この前、謙也くんから聞いてん」
「謙也から?」

謙也をちらりと見ると、謙也も「俺、なんか言うたっけ?」と首を傾げた。

「蔵の志望校」

名前がそう言うた瞬間、謙也は「ああ、言うた言うた」と思い出してすっきり、みたいな顔をしとった。ちゅーか何こいつは人の彼女に俺の志望校バラしとんねん。自分の口から言おう思てたんに。

俺と謙也は偶然にも同じ大学を目指しとって、お互い志望校を言い合った時は「なんや、お前もかいな!」と笑いあった。謙也は家を継ぐんをずっと嫌がっとったけど、どういう心境の変化か医学部にいくらしい。
俺はというと、テニスを仕事に、とか言えるくらい上手かったらええねんけど、上には上がおることを中高で嫌というほど知らしめられたから、プロは諦めて、もう一つの夢やった薬剤師を目指すことにした。今の俺の成績なら推薦で行けるらしく、俺は面接の練習だけしとけと、夏に二者面談で担任に言われた。

テニスは好きやから、大学でも趣味程度には続けるつもりや。謙也も同じ考えだったらしく、俺らの腐れ縁はどこまで続くんや、と笑いながら、ほっこりした気持ちになった。

名前の志望校は俺とは違う大学やった。名前の友達にこっそり聞いたら、女子大に行くらしい、とだけ教えてくれた。女子大とかほんまよかったー、安心やわー、て思たのがほんまに、つい最近の話。

「名前は、K女目指してんねんやろ?」
「え、な、なんで」
「前に相方さんに聞いた」
「……」

そう言うと名前は今は教室におらん相方さんの席をちらりと見た。なんでバラしとんねんて俺と同じ事思てるんやろなあ。
でも今の名前の成績やったらそんながりがり勉強せんでも、合格ラインは全然越えとるはずや。それやのに、なんでそんな頑張ってんのやろか。

「わたし、やめたんよ」
「え?何で?」

「…く、蔵と、同じとこ行きたいから!が、頑張るに決まってるやん!」

ペンを走らす手を止めて、俺を見上げて言うた名前は、少し怒っとるようやった。

「な、んやそれ」
「め、いわく?でも、わたし、蔵と一緒のとこ、行きたくて、」

それで、それで、と必死に俺に言うてくれる名前は、なんでこんなに可愛いんやろか。そんなん、嬉しいに決まっとるやん。あああそんなん言われたら今すぐにでも抱きしめてキスしてめちゃくちゃにしてしまいたいわ。

「名前、ごめんな」
「え、」
「ほんまごめん」

俺の謝罪に、名前は一瞬絶望的な顔を見せた。ちゃうよ、大丈夫。名前が思ってるごめんとちゃうから。安心し。

「そんな頑張ってくれてんのに、俺、我儘言うて困らせてしもたな」
「…でも、わたしも、イチャイチャしたいん、よ」
「おん、でも、あかんのやろ?」
「わ、わたしは、頭が悪いから、めっちゃ頑張らんと、蔵に追いつかれへんねん」
「せやったら、俺も頑張る」
「な、にを?」
「俺も名前の勉強の手助けするし、求めんのも、それなりに我慢する」

それなりやで?と付け加えると、名前はふにゃり、と嬉しそうに笑った。

「…なあ、お前らここ教室やで」

「…!?」
「俺は普通にわかっとるけどな」
「わあああ、さ、いあく…!」

穴があったら入りたい状態の名前も可愛いらしいなあ。
冒頭で「性欲の秋!」とかぬかしとった俺も出来れば同じ穴に入れて欲しい。これから俺は、名前と毎日勉強するんや。我慢の秋に変更せなあかん。

「蔵、ほんまに勉強教えてくれるん…?」
「もちろんやで。一緒の大学行こな」
「…!うんっ」

なんかむっちゃやる気出てきたよー、と燃える名前に俺は早速「ほな今日俺んちで一緒に勉強せえへん?」と持ちかけたった。頭ん中で勉強やのうてああして、こうして、と名前にとって余計な邪念が生まれまくっとるけど、あかん。あかんのや。勉強をするために俺ん家に名前が来る、ただそれだけや。押し倒したり、とか…ぜ、絶対我慢や、俺!

「え、ええの?」
「当たり前やん。わからんとこ、教えたるで?」
「行く!行きます!わからんとこ、実はたくさんあって」

俺勉強出来てほんまによかったなあ、と心から思った。これで俺も金ちゃんみたいな成績やったら、一緒に勉強机の前で唸るとこやわ。そんなんカッコ悪すぎる。あ、いや、金ちゃんはカッコええねんけど。(現在俺よりも身長が高うなってるらしい)(あんな可愛いかった金ちゃんが…!)

「ん、なんでも聞いてくれてええよ」
「蔵、苦手科目ほんまにないんやなあ、すごいなあ」
「せやな、化学とか、なんでも答えられんで、聞いてな」
「化学とか…わけわからんすぎるよね…!だいきらいや」
「化学はおもろいで。わかるようになったら、きっと名前も好きになると思う」
「そうなんかなあ」
「そうそう」

「く、蔵のすきな科目なんやったら、わたしもすきになりたい、よ?」

ああああ阿保ちゃうかこの子…!なんで今俺を喜ばせること言うねん無意識とかほんま勘弁してえな心臓何個あっても足りひんやんけ…!
俺は顔が赤くなりそうやったから左手で口元を一瞬覆った。クールダウン、クールダウン。…はあ。あかんて名前。俺、今日手ェ出さずにおれる自身が…全くないわ。






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