はっきり言うて我慢の限界や。なんぼ小春ラブの俺でも、心は男なわけやし、ちゃんと好きな女もおるわけで。そんでもってその好きな女とは両想いなんやから、あれこれしたいと思うんはごくごく普通の事や。こんなもん自然の摂理やろ。

「ヤりたい!」
「まだキスもしてへん癖に」
「財前お前ほんま…あーくそ!」
「ちょっ、頭がしがしすんのやめてください」
「お前が余計な事言うからや」
「ほんまのことやないすか」
「くっ、お前なあ!」

確かに財前の言うとおりなんや。付き合ってもう結構経つのに、キスもまだとかどういう事やねん!小学生のマセた恋愛してるわけちゃうねんぞ。おっ、俺かてほんまにアイツのこと、すっ、すすす、き、やし、大事にしたいとは思うけど。…健全な男子高校生が、いつまでもお手手つないで仲良しごっことか無理やん!その先の事は妄想するばっかで、行動に移したくても向こうが嫌がるならそれはしたないし。

「もう言うた方が早いですって。キスさせろ言うてしたらええですやん。はいそれで解決」
「言うたところでアイツが承諾せな犯罪やん」
「真面目か。きしょっ。あんたに原因あるんとちゃいます?キスまでいかんのって」
「俺に原因って、なんでやねん」
「いやなんかもうヘタレすぎて。大事にしすぎなんすわ。ちょっとくらいSになってもええと思いますけど。女はその方が喜ぶやろうし」
「…お前、恋愛マスターか!なんで女の事なんでもわかんねん!お前アレやろ!絶対手のひらで転がして楽しんでるやろ!」
「転がされるよりマシなんで」
「誰が転がされとんねん俺か!?お前に相談したんが間違いやった。俺ほんまアホ。しょーもな」
「ほんま、しょーもな」
「お前が言うなどアホ!」

結局経験豊富そうに見える財前から得たものは何一つ役に立たへんものやった。役立たずか。
まあ多分俺の予想やけど、アイツには所謂、直球しか効かん。付き合う時もせやったわ。遠回しとか絶対通用せえへん。全てはストレートど真ん中。…はあ、嫌んなるでほんまに。



今日一緒に帰ろ、と今日も昼休みにわざわざ教室まで言いに来た。そんなんわざわざ来んでも、俺は最初からそのつもりやで、というのは言わん。顔見れたら嬉しいし、な。
おう、と短く返して、会話終了。名前は返事を聞くなり嬉しそうに笑て、帰ってしもた。うあー何してんねん俺!ほんまヘタレマスターか!

しかしそろそろほんまに我慢ならん。顔みただけでムラムラする。コイツの唇なんぼほど柔らかいんやろ、とか、舌入れたらどんな気持ちよさそうな顔すんねやろ、とか、俺の挿したらどんだけ痛がって、どんな声で啼いてくれるんやろ…ってあああこんなん妄想したらあかん!中腰にならざるを得んくなる!あかんあかん!

「ふぅ、あっぶなー」
「何が危ないん?」
「んおおっ!な、なんや白石お前どっから湧いて…!?」
「どっからって、今日はテニス部で昼飯食う日やろ。お前遅いから俺が様子見に来たったんや。じゃんけんで負けてしもてな」
「そこは部長として、とか言うとけや…」
「ああ、うん、じゃあ部長として」
「…(ナチュラルに天然なんは相変わらずやな)」

白石の平和ボケした顔見たらなんや一気に冷めた。持ち直した。もうなんも危なくないわ。

「んで?何が危ないん?」
「掘り返すなや!その件終わったやろ!」
「いや気になるやん」
「ほな気にせんでええ。大したことあらへん」
「もしかして名前ちゃんのことか?」
「なっ、ななななんで知っ、…!」
「いやさっき財前からいろいろ聞いてな。お前アレらしいな。名前ちゃんとAもまだらしいな」
「Aて…死語にも程があんでお前…。ちゅーかうっさいわほっとけ!アイツなんで言いふらしてんねんマジシバく!殺す!」
「財前に相談なんかするからやろ?ユウジが悪いで」
「せやな、ほんまや…、ってんなわけあるかい!」

内緒にして、とは言うてなかったけど、まさか一番知られたくないテニス部の連中にバラされるとは思てへんかった。迂闊やった俺…!ほんまダサい。

昼飯をテニス部と食べるんはええけど、今日は地獄の質問攻めやった。ここまで来たらもうどうでもよくなって、みんなのアドバイスを色々聞いた。白石曰く、「甘い声と顔で落ちるやろ?」らしい。お前限定やそんなもん。ただしイケメンに限るわそんなもん。俺はイケメンの領域には達してない中途半端ボーイズの一人やからその戦法は無理なんや。

「キスしたいって普通に言うたらええやん」

謙也のごもっともな発言。これやから童貞は。…俺も童貞やった。いやでもそれが言えたら苦労してないっちゅーか、その一言が言えんからこんなもがいんねん。そんなこともわからんとイグアナみたいな惚けた顔でお前みたいな童貞が俺にアドバイスしてくんなどアホ!

「…ゆ、ユウジめっちゃ俺のこと睨んでるやんけ…なんでや白石」
「それは謙也、お前が童貞やからやで」
「なっ!なんやと!?お前も童貞やろがホモ氏ィ!」
「誰がホモ氏やねん!俺の小春への愛と名前への愛は別モンじゃボケコラカス!彼女いない歴=年齢の奴がしゃしゃってくんなイグアナ!」
「おっ、おま、うちのスピーディーちゃんをネタにすんのほんまやめて!俺マジ泣く!泣きそう白石!」
「言い過ぎやでユウジ、謝り。謙也は謙也や、そうやろ?」
「お前のその博愛精神なんやねん!ほんまイライラすんねんけど!ほんでなんで最近ちょっと謙也に甘いんや!」
「あまりにも謙也が不憫で不利で可哀想な時は俺は謙也の味方やねん」
「白石…残酷すぎるやん…」

結局いつもと同じく喧嘩勃発で、俺の恋愛相談は解決することはなく。。そして放課後を迎えた。

部活が終わってすぐに教室まで名前を迎えに行く。「おつかれ」と笑顔で言われたら疲れなんかすぐにぶっ飛んで、プラスあんな事こんな事出来たらええのに…と妄想タイムに入りかける。あかん、最近頭んなかそれしかない…。

「帰ろか」
「あ、待って、これ終わってからでもいい?」
「何?」
「この前わたし風邪で休んだ時あったでしょ?その時のノートたまっちゃって」
「真面目やなー。そんなんコピーしたらええのに」
「…!そ、その手があったか!」
「え、マジかお前。猿でも気付くで」
「猿は気付かないよ」
「比喩や比喩」

急いでペンやら消しゴムからをしまって「コピーとってくる!」と立ちあがる。机の間を抜けようとしたんか知らんけど、角に躓いて派手にずっこけよった。あーあー、何してんねん全、く?

短いズカートがめくれて、薄ピンクのパンツが俺にさあ見ろ!とでも言うてるんちゃうか、ってくらい堂々と俺の前に突然現れた。
え、な、あ、なに、これ、はは、ハプニング?っちゅーか、コイツなんで紐パン履いてんねん…!

身体が勝手に動いた。今まで我慢しとった分が、爆発して。理性なんて完全に働かんし、目の前で「いったぁ、」と起き上がろうとする名前なんかお構いなしや。

「…え、ゆ、ユウジ、くん?」

めくれたスカートの丁度上に跨って、腰を落として体重をかけた。これで動けんはずや。

「名前」
「な、何?」
「俺、な」
「…?」

「キスしたい、お前と」
「!?」

直球ど真ん中ストライク。誰にも文句なんか言わせん。俺は、今、今この瞬間名前とキスがしたいんや。

返事も聞かずにゆっくり顔を傾けて、名前の頭に手を添える。「目ぇつぶって」と囁くと、真っ赤な顔でぎゅうっと思い切り目を瞑る名前。可愛いくてしゃーない。

一瞬、触れたか触れてないんかもようわからんほどの短い時間。せやけど確実に今、俺は名前とキスをした。

「…もう一回、ええか」
「う、ん。き、聞かなくて、も、いいよ?」

なんやそれ、俺が今まで散々我慢してきた時間はなんやったんや。なんぼほど一人でお前想像して出したと思てんねん。
せやけどその分、初めてやからわからんけど、めっちゃ気持ちよくて、キスしかしてへんのにもうイキそうなくらい感じてしもてる。これが、好きな女とするキス。すごい威力や。めっちゃ幸せ。

「ユウ、ジ、くん、」
「ん、何?」

「ずっと、キス、したかったっ」

ほんましょーもない。名前は待ってたんや。ずっと、俺を。ほんまアホやな俺。謙也にやいやい言うこともなかったんや。
俺の方がもっとしたかった。この先のことはまだ今日やないけど、日は近いんやと思う。


「ほんならたくさん、しよか」
「っ、ん」


fin.




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