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She is,


「お前が好きだ。俺様と付き合え」
「ごめんなさい」
「……」
「……」
「アーン?」
「あーん?じゃなくて。ごめんなさい跡部くんとは付き合えません」
「(言い方がまずかったか)…俺様が付き合ってやってもいいぜ」
「いや無理ですすいませんごめんなさい」
「……」
「……」

「なんでだ」
「わたしが跡部くんを、好きじゃないから」


人生で初めて告白というものをした。結果は…こういう場合なんていうんだろうか?良い返事を貰えるとしか思ってなかったからわからねぇ。挙句絶対に上手くいくと踏んで大勢の前で公開処刑だ。この女、どこまで俺を苔にすりゃ気が済む。
初めてコイツと喋った時もそうだった。名字は俺に媚びることは全くせず、普通の女なら俺様に話しかけられたということだけで、脳震盪でも起こしちまいそうな程興奮し喜びの声を上げるのに。コイツは淡々と俺に必要な言葉だけを返して、そしてすぐに去って行った。

今だってそうだ。こんな大勢のギャラリーに見られて、普通の女は多少なりと恥ずかしがったりするものだ。だけど名字は全くそんな素振りを見せずに、この俺様をフッてやった、とでも言いたそうな堂々たる顔つきだ。腹ただしいことこの上ないぜ。

「何故お前は俺様を好きにならない?」
「…跡部くん、それ本気で聞いてる?それとも冗談?」
「あ?本気に決まってんだろが。バカにするのも大概にしやがれ」
「完全にあなたの方がバカにしてるよね?」
「なんだと?俺様がいつお前をバカにした」
「……て、天然?」
「いいから質問に答えろ。俺様の何が気に入らねぇ」

顔も良い、金も有る、権力だって、全て持ってる。こんなに完璧な人間がこの世に居ていいものだろうかと日々思っているのに。テニスだって俺はまだまだ努力して、いずれ世界の頂点に立つ男だぞ、俺様は。

そんな俺様の、一体何が嫌だというんだ。

「性格」
「……あぁ?」
「その性格だよ。人をいつも上から見てるような。顔が良いのもお金持ちなのも事実だし、嫌じゃない。だけどその性格だけはどうしても好きになれない。だからごめんなさい」

ざわざわとギャラリーがうるせぇ。こんな大勢の前で何てことを言うんだコイツは。俺様の性格が気にいらねぇだと?どういうことだそれは。初めて言われた言葉に、俺は不思議な、今まで感じたことのない思いを感じた。

「じゃあお前はどうやったら俺の女に出来んだよ」
「どうやっても出来ないと思うよ。跡部くんだけは好きになれない」
「……」

なんだ、この感情は。ここまで言われて苛々は当然するが、なんだ、この変な痛みは。

「…ごめん、言いすぎた」
「…」
「あ、跡部くん?」
「明日、一日でいい」
「え?」

「明日一日だけ、俺の女になってくれ」
「…はあ?」

「そうすりゃ俺も、もう二度と言わねぇ。お前に話しかけたりもしない」
「何それ。本気?」
「本気だ」

名字は少し困惑して、散々悩んだ挙句「一日だけなら」と了承してくれた。これで終わりにしてもらえる、と思ってくれていい。
一日だけ俺に、お前の時間をくれ。


*


朝は迎えに行く、と昨日伝えて、今日は徒歩で登校だ。歩いて、なんていつぶりだろうか。たまには悪くねぇ。朝練の所為で名字には悪いがいつもより大分早い時間に迎えに来ることになっている。というか、なんだ、名字の奴結構いい所に住んでるじゃねぇか。何階建ての家だこれ。
自動ドアを抜けるとでけぇ電話のようなボタンがあって、正直どのボタンを押せばいいのかわからねぇ。なんだこれ、電話なのか?電話番号を押せばいいのか?
人差し指を準備して、携帯を片手に昨日教えてもらったばかりの番号をそのまま押そうとすれば、もう一つ奥にある自動ドアから名字が出てきた。あ?

「…何してんの」
「お前を呼び出そうとしてたんだよ」
「……もしかしてわたしの電話番号押そうとしたとか言わないよね?」
「?、違うのかよ」
「はぁ…とことん跡部くんとは付き合えないな」
「なんでだ。ていうかお前って金持ちだったんだな。結構いいとこ住んでんじゃねーか」
「一応教えて置くけど、わたしの家はこのマンションの4階の小さな一室だけだから」
「は?」
「これが庶民の住居だからね」

特別なのはあなた、と指を差されて思わず黙り込む。どういうことだ。この建物全てこいつの部屋じゃねぇのか。マンションの一室のみ、だと?どんだけ息苦しい生活送ってんだよこの女。せめて忍足家くらいの広さはあるもんなんじゃねぇのか、庶民ってやつは。

「行こう、跡部くん。あ、景吾って呼ぼうか?」
「…お前、結構ノリノリじゃねぇか」
「いやなんかさ、わたし彼氏出来たことないし、よく考えたらこういうの初めてなんだよね。誰かがわざわざ迎えに来てくれたり、とか」
「寂しいやつだな」
「跡部くんに言われたくないな」
「どういう意味だ」
「一日だけなら、ちゃんと彼女の努めを果たすよ。だって明日からもう話しかけないんでしょ?今日が終わったら諦めるってことだもんね?」

そう言われてはっとした。今日が終われば、俺はもう二度と名字に話しかけることは許されねぇ。自分からそういうルールを作った。自分でつくったルールを俺様自身が破るわけにはいかねぇし、俺のプライドが許さねぇ。つーか一日彼女になってくれなんて言ってる時点で、プライドも糞もねぇけど。

「景吾、ってかっこいい名前だよね。お父さん命名?」
「知らねぇ。つーか普通だろ」
「いやいやかっこいいよ、名前と顔は」
「性格は」
「最悪」
「てめぇ犯すぞ」
「すいませんでしたー」

くすくすと笑う名字。話の内容は気に喰わねぇが、コイツが楽しそうならそれは良いことなのかもしれねぇ。俺は全然楽しくねぇけど。どうにかして主導権を握りたいのが本音だが、ここは一先ず我慢だ。

「朝練大変だね。わたし教室行っていい?」
「は?」
「え、何、見て欲しいって?」
「……なんだよ、見たくねぇなら好きにしろ」
「顔赤いね」
「!、てめぇマジ今日のうちに犯してやるからな」
「うそうそ、赤くないって、ちょっとしか」
「うるせぇ、早く教室行けよ」
「んー…、行ってもどうせ誰も居ないしね、こんな時間」

遠まわしに朝練の為に早起きさせられた、とでも言いたそうだな。俺も少しは悪いと思ってるよ。

「見に行く」
「別に、無理して来なくてもいい」
「無理じゃないよ、行きたいから行くの」
「…そうかよ」
「(あ、嬉しそう)」

ふい、と顔を逸らして、少々強引に名字の手を引いて部室へと向かう。部室に女を連れ込むのは初めてのことだった為、向日や宍戸なんかは少々渋い顔をした。俺様が女連れ込んじゃいけねぇっていうのかよ。忍足の余裕さを見習え。…いや待て、ニヤニヤしすぎだろうアイツ。そんなに俺がこの女に入れ込んでるのが面白ぇのか。こっちは至って真剣に今日という一日にかけてるってのに。

着替えてからコートに入る前に、名字の頭にぱさりとジャージをかけた。「わ、」と小さな声を出した後、何?と言いたそうな顔で俺を見る。

「寒いから着とけ」
「…あ、ありがとう」

半袖になったばかりの俺の腕にも若干鳥肌が立っているのは内緒だ。そもそも俺様がここまで誰かにしてやること事態異常なことを知れ。周りの野郎共が明日は雪か槍か?なんて噂してんのも丸聞こえだっての。どうやら相当朝から走り込みてぇらしいな。奴らに「外周50週行ってこい」と過酷な命を下した後、俺は集合をかけて残った部員だけで朝練を始めた。



朝練が終わってからはもちろん授業がある。クラスが同じなら授業中も離れずに済むが、そうじゃねぇからそういう訳にはいかねぇ。教室まで送って仕方なく自分の教室に戻ると、昨日の事を大勢の女子に詰め寄られる。面倒臭ぇ。静かに傍観してらんねぇのかてめぇら足軽止まりの女は。

何とか口車で足軽女共をあしらって席につき、昼までの授業を真面目に受ける。休憩時間の度に行こうかとも考えたが、これがマイナスポンイトになってしまうのは御免だ。大人しく四限目が終わるのを待って、その終了のチャイムが鳴ったと同時、俺は席を立って教室を出た。


「10分休憩も来ると思ってたのに」
「お前ウザがるだろーが」
「すごい、なんでわかったの」
「…」
「冗談だよ。お昼食べよう?」
「ランチか?」
「何をおっしゃいますか景吾くん。朝からこれに気付かなかったのかい」

ひょい、と名字が持ち上げたのは、ギンガムチェックの小せぇトートバッグ。それが何だってんだ。

「いつもはこれに一人分のお弁当なんだけどね」
「?」
「今日は、ほら!じゃじゃーん」

バッグの中身を俺に見せると、小せぇ弁当箱が二つ重ねて入れられている。俺にとっちゃ手作りの弁当なんて差し入れで貰いすぎて、在り来たりの物な筈だが、名字が作ったとなればそれは在り来たりなんかじゃあなく、俺が今まで食ってきたどの食べ物よりも高級料理に思えた。

「くれんのか、俺様に」
「?、そうだよ?当たり前じゃん」

はい、と笑顔で俺に弁当を渡してくれる名字は、ただ今日一日彼女を演じてくれているだけだ。わかってはいるが、嬉しくて仕方なかった。「あぁ、」と曖昧に返すと、少しむっとして「こういう時は、ありがとうって言うんだよ」と、そんなこと分かっている、と返したくなることを言われた。今のはタイミングがわからなかっただけだ。

「どこで食べようか」
「お前はどこがいいんだ」
「んー、じゃあね、中庭!今日はいい天気だからね」

人目につくぞ、と言おうとしたが、今日一日くらい人目についたってどうということはないか。俺はそうと決まれば名字の手を握って中庭へ向かう。コイツの言うとおり、暑くもなく寒くもなく丁度良い気温で、良い天気だ。

弁当箱を開けると、宍戸やジローの弁当に中身がよく似ていた。知ってるぞ、これはアレだろ、タコさんウインナーだろ。

「タコさんウインナー好物?」
「いや、食ったことねぇな」
「ただウインナー切っただけだけどね」

喜ぶかなと思って、と笑う名字は、俺よりひと足先にタコさんウインナーをぱくりと口に入れた。黒ゴマでつくられた目が、なんとも言えねぇ愛くるしさを表現している。名字がつくったとなると余計食いづらい。…いや、食うけど。

「…うまいな」
「え、本当?あ、じゃあね、玉子焼き食べてよ。景吾は砂糖派でよかった?」
「砂糖派?」
「玉子焼きには砂糖派とだし派があるの」
「そうなのか」

推められた玉子焼きを一口で口に放り込むと、口の中に甘い卵の味が広がった。これが庶民の味か。
どれもこれも食べ慣れていない味で、全てうまかった。「料理得意なのか」と聞いたが、「全然」そうじゃないらしい。明日も作ってくれねぇか、とは何となく遠慮して言えなかった。この俺が誰かに遠慮、なんて。有り得ねぇ。

「放課後はどうする?待ってればいいの?」
「帰りたいかよ」
「帰ってもすることない」
「じゃあ待ってろ。…見に来てもいい」
「見に来てほしいじゃなくて?」
「いちいち訂正させようとするんじゃねぇ!」
「ふはは、ごめんごめん。いいよ、行く。待ってる」
「…あぁ」
「景吾が終わるの、待ってる」
「わかったから。つーかお前食べるの遅ぇ」
「あ、バレた?わたし食べるの遅いんだよね」
「別に気にしてねぇからゆっくり食え」
「…う、うん」

無言になっても、なんだかその時間も心地良かった。髪を撫ぜる風が気持ち良い。このまま毎日ずっとコイツと、なんて「有り得ない」と言われてしまう夢を見てしまう。俺の性格が気にいらねぇ、か。だったら俺はお前が好きだというこの気持ちを一体どうすればいいんだ。消すことなんて簡単には出来そうにねぇし、今日のことでますます惚れ込んじまってる。
今日が終わったら、明日から俺はどうすればいいのか、分からない。今までコイツを中心として廻っていた俺の世界は、明日から何を中心に廻るのだろうか。
コイツを好きじゃなかった頃の俺は、どうしていたのか、忘れて、思い出せねぇ。


放課後になって、部活に行き、ベンチでそれを見てる女にたまに視線を送りながら、テニスをする。こんなに特別な感情を誰かに抱くことなんて、この先きっと名字以外に有り得ねぇ。女なんざみんな同じで、その気になればどんな女だって落とせると思ってたが。たった一人、アイツだけはそうもいかねぇ。今日一日、なんて朗らかな一日を過ごしてしまったんだろうか。攻めもせず、ただ普通にアイツと過ごす時間を楽しんで、つかの間の幸せに浸ってしまった自分が歯痒い。

部活が終了したのは午後7時を過ぎていた頃だった。薄暗い中アイツを一人ベンチに座らせていたことに、若干の申し訳無さを感じながら、名字の元へ向かおうとした。が、アイツの姿が無ぇ。…どこ行きやがった。

ライトの御陰で大分明るい筈だが、近辺には居そうに無ぇ。ついさっき見たときは確かに居たのに。内心焦りながらも、冷静になるよう言い聞かせて部室に戻ってみた。

「あ、おつかれー」
「……」
「?、景吾?どうしたの、部活疲れて、」
「俺様に何も言わずに、勝手に居なくなるな」
「え?」
「…っ、心配したっつってんだよ!」

思わず部室のソファに優雅に座っている名字を抱きしめた。思っていたよりずっと小さくて華奢で、思わず力をもっと強く込めたくなる。

「ご、ごめん、だって寒かったから」
「ジャージ渡したろ」
「うん、でも寒かった」
「…悪ぃ」
「うん、もうあったかい」

そう言うと、名字は俺の背中に手を回して、ユニフォームを握った。その行動が無償に可愛いく思えて、つい色々な事を頭で考える。いや、やめろ。考えねぇ方が自分の為だ。

「…名字」
「うん?」
「俺の事、嫌いか?」
「嫌いじゃ、ないよ」
「演技は抜きだ。今は俺の女じゃなくていい。正直に言え」
「…わかった」

「俺の性格が、嫌いか」
「…あんまり、好きじゃないな」
「それは嫌いと同じ意味なのか」
「む、難しい質問だね」

「好きだ」
「……うん、昨日聞いたよ」

「好きなんだよ」
「うん、」

「俺と付き合って欲しい」

自慢の顔も、自信に満ち溢れた態度も、コイツの前じゃただのコンプレックスにしかならねぇ。性格なんて、直しようがねーじゃねぇか。有りの侭の俺を、お前はどうやったら好きになってくれるんだ。
今日がずっと続けばいいなんてそんな女々しい事を思ってるのは俺だけで、自分で自分に嫌気さえ差すというのに。

「跡部くん」
「…あぁ」

わかってる。わかってるんだよ。色んな事を百も承知で俺はお前にこうして縋り付いている。格好悪い、ただのダセぇ男だ。
俺だって、好きな女にフラれりゃ、胸が痛くなる。今までこんな感情とは無縁だったが、これが、失恋の傷ってやつなんだろ?これが、心が痛ぇってことなんだろ?

「空気読めないし、マンションの仕組みも知らない、タコさんウインナーも今日が初体験。言葉は常に上からだし、しかもそれが無自覚だし。正直言って本当迷惑」

そ、そこまで言うかこの女。
そう思って一睨みしてやろうとすれば、名字の方からぱっと顔を離して、俺を見つめた。…睨むに睨めなくなったじゃねぇかバカ。

「でも、今日でわかったことひとつあるよ」
「な、何だよ」

「跡部くんは人よりずっと、やさしいね」

そう言って、微笑んだ名字は、本当に愛しくて、今すぐにでももう一度腕の中に収めたい衝動に駆られる。

「あぁ、あと。努力家、だよね。意外と繊細っぽいし、なんか几帳面そう」
「随分と沢山あるな」
「ほ、ほんとだ」
「…迷惑なら、悪かった。気をつける」

だから、嫌いだなんて言うんじゃねぇ。
祈りに祈って、どうかこの願いが叶って欲しいと思う。神に祈るなんざどんな状況だろうが御免だと思ってたが、今だけはもう神頼みしかねぇと思った。

「跡部、くん」

何だ、と返事をする前に、口を塞がれた。柔らかくて、暖かくて、今までしてきたキスとは比べ物にもならない、味わった事のない感触だ。

「…っ!な、何すんだてめ、」

「跡部くんの女に、なるよ」

そう言って小悪魔的に笑う名字は、少し頬を染めていて、俺には逆に天使に見えた。
「なってもいいよ、の方がいいかな?」とわざわざ訂正を入れようとする名字の額に、俺は仕返しとしてキスを落とす。

「言っとくけど、ファーストキスだからね。今の」
「言っとかなくなても分かるぜ。処女臭がする」
「な、ひどい!やっぱさっきのナシ!跡部くんの女にはならない!」
「アーン?今更無理に決まってんだろ。お前から俺の女になります宣言したんだ、手放す訳ねぇだろ」
「ほんっと性格悪い」
「何とでも言え。つーかお前何勝手に人の唇奪ってんだ」
「勇気出してしてあげたんでしょーが!」
「うるせぇ俺はいつだって相手をじわじわ甚振って攻めるのが好きなんだ」

ただで済むと思うなよ、と自分のものになったことが嬉しくて嬉しくて、興奮が抑えられない。名字とのやり取りに自然と笑みが溢れてしまう。本当に俺は、一体どうしちまったんだ。

それから何度も俺からキスを繰り返しして、俺が満足した頃には名字は息を上げていた。そんな顔してっと本当に襲うぞ。
嫌いな奴には手厳しく冷たいが、好きな奴には甘くどちらかと言えば忠誠を尽くすタイプかこいつ。ますます興味のそそられるいい女だ。後一ヶ月もしたらきっと俺無しじゃ生きていけねぇようにしてやる。

「明日も明後日も、毎日迎えに行く。弁当も食いたい」
「はいはい、作ればいんでしょ」
「玉子焼きは砂糖派だ」
「だし巻きの方は食べたことないじゃないか」
「部活も見に来い。居なくなる前に俺に言え」
「…ちょっと、命令多すぎない?わたし束縛されるの嫌なんだけど」
「知らねぇよ。お前は俺だけ見てればいい」

「…ほんと、嫌いだな、その性格」
「なんとでも言えよ?」
「ムカつくー!横暴ー!ハゲー!」
「ハゲてねぇ!」

「景吾」
「あん?」
「よ、呼んでみただけー」
「…名前で呼んでほしいのか」
「っ別に」

「名前」
「!、ちょっ、景吾、ここ部室」
「うるせぇキスだけで終われるかよ」
「し、色魔。変態ホクロ」
「謝ったら優しくしてやる」
「…痛くしてもいいよ?」
「っ、優しくしろって言うところだろうが」

お前無しで生きていけねぇのはどうやら俺の方らしい。
一生俺の性格なんて好きにならなくていい。その代わり一生傍に居ろ。後悔したってもう無駄だ、一生後悔し続ければいい。俺はお前を手に入れることが出来たんだ、もう何も怖いものなんてねぇよ。

「名前」
「ん?」
「好きだ」
「もう!わかったから!一日に何回言うのそれ!?」
「うるせぇ好きだから好きだっつって何が悪ぃんだよ!」
「恥ずかしくないのか!」
「お前はもう少し嬉しがれよ!」
「何回も言われても嬉しくない!」

前途多難とは正にこの事だな。俺も、大分手を焼くことになりそうだ。
問題は山積みになりそうだが、取り敢えず、一生手放す事はねぇから覚悟しておいた方がいい。



fin.fin.



She is the last person to love me.
(彼女は僕を愛してくれそうにない。)




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