!モブ姦ちゅうい!




「――長、船長!」
「っ!」
「良かった、気付いた」
 ナイトミストが目を覚ましたのは薄暗い船室だった。が、そこはストームライド・ゴーストシップの一室ではないことはすぐに解る。見覚えのない船室だ。

 何があったのかとナイトミストは記憶を手繰り寄せる。メガラニカの自警団でもあるグランブルー海賊団は、ここ最近バミューダ△のライブを荒らし迷惑行為が問題となっている新興組織の海賊を壊滅させようと敵の船に戦闘を仕掛けたのだった。これはライブ損失にもなる、というバミューダ△側からの正式な依頼でもある。直接ライブの邪魔をされたというレインディアの悔しそうな瞳は脳裏から離れない。

 海上、ひいては船上での大乱闘になったところまでは覚えている。が、その先が思い出せない。柱の後ろで手首が拘束されていることを考えると、ここは敵の船で自分たちは捕まったのだろうということは解る。
「悪いユニ、何があったか説明してくれ」
「はい」
 両腕を頭上で拘束された状態でありながらユニはナイトミストをしっかりと見て話し始めた。敵の船に強力な術師がいたこと。その術でこちら側の動きを制限されたこと。後ろから殴られたナイトミストが敵の船に連れていかれたため、追って来たら自分も捕まってしまったこと。
「……他の船員たちは?」
「船長がいないので私が一度退却を命じました。以降の権限はキッドとストームに。撤退時はバンシ―たちに助けてもらったので、コキュートス様とネグロマールが術の対策を練ったらこちらに戻って来てくれると思います」
「そうか。迷惑掛けたな」
「いえ。……それより、ここを抜け出さないと」
「お前の杖は?」
「ここに来る前に奪われました。さっきの戦闘で魔力もほとんど……」
「……そうか」
 手首に食い込む縄を千切ろうと試みるが、音を立てるだけで外れそうにはなかった。ユニの方は鎖なので千切れそうにもない。
「とりあえずはあいつらが戻って来るまで待つしかない。何されても死ぬなよ、ユニ」
「は、ミストこそ」
 ユニにいつもの憎まれ口が戻る。それに安心したのも束の間。奥の扉が開いて乗組員と思われる男たちが入って来た。ゾンビではないところを見ると、普通のヒューマンなのかもしれない。

「お目覚めみてェだなァ、船長さん?」
「……ご丁寧にどうも。お前がこの船の船長かな?」
「ご名答。お前たちの仲間は逃げちまったけどどうするんだい?」
「……ちょっと強い術師を使えてるからって調子に乗らないことね」
「なんだと、この女!」
 船長と呼ばれる男の背後にいた男たちが一斉に口汚く彼女を罵るが、当の本人は気にしているどころか見るつもりもないようだった。彼女が考えているのはここを脱出出来るのかということと、自分たちの船長を辱めようとした海賊たちへの処分だけだろう。
「いいねェ、気の強い女は好きだ」
「あら、ちっとも嬉しくないけどありがとう。私のことが好きならこれを外してくれると嬉しいわ、成り上がりの船長さん」
 ほう、と口笛を吹いてから男はポケットから鍵束を出してユニの手首と天井とを繋いでいた鎖を留める南京錠を取り外した。これにはユニ自身も意外だったらしく、目を丸くして男を見た。
 男はにっこりと笑うと、ユニの腕にまだ残っている手錠の鎖を掴む。それを引いて無理矢理ユニを立ち上がらせると、顔を近付けてもう一度笑った。

「――――てめェこそ調子乗ってんじゃねェ!!」

 一拍置いて、ユニの身体が壁に叩き付けられる。男に殴られた腹部を抑えながら、彼女は恨めしそうに男の巨体を睨んだ。男はそれでも楽しそうにユニに向かって腕を伸ばす。ナイトミストと同じく両手の自由を奪われているだけでなく水霊術の一つもまともに使えなくなっている彼女は抵抗らしい抵抗をすることすら出来ず、されるがままに前髪を掴み上げられた。
「やけに身体が冷てェ……女、お前やはりウンディーネか?」
「っ……だったら何? 私を奴隷商に売り飛ばしてもっと成り上がりたい?」
 下卑た笑みを浮かべ続ける男はそういった組織とも関わりがあるのだろう。奴隷商、メガコロニー犯罪組織なんてそれに比べれば可愛いものだ。種そのものが少なくなっているユニたちウンディーネや、美しさの代表とされるマーメイドたちを拉致しては売り叩く、惑星の闇。
 ユニの身体は再び床に落とされる。男の太い指がケープのボタンを引き千切り、コルセットの紐とリボンタイとを解いた。ここまでされれば誰であっても何をされるかなんて解り切ったことだ。
「ユニ!」
 殴られるほうがまだマシだった。両腕を抑え付けられながらもユニはブーツで男を蹴り上げようとするが抵抗むなしくその脚すらも床に縫い付けられる。男は腰に差していたナイフを抜くと、スカートと下着とをまとめて切り裂いた。ろくに慣らされてもいな蕾に指が突っ込まれ、ユニはちいさく呻き声を上げる。
「お前もウンディーネなら知ってるだろう」
「……っ、ぐ、」
「お前たちウンディーネの数が減ったのは奴隷商に連れて行かれたからだと」
 中を弄んでいた男の指が引き抜かれる。
 ユニがグランブルーに加入したのは、ひとえに身の安全を得るためでもあった。奴隷狩りに遭い、逃げることに疲れていたユニに手を差し出したのはナイトミストだ。

――俺たちの手を取ってくれたなら、俺たちはお前を仲間として守る。
 そう言ったのは、確かに過去のナイトミストだ。

(何が、守るだ)
 心の中でいくら後悔しても、目の前でユニが暴行を受けているというのはどうしようもない現実だった。

「処女のウンディーネは高く売れるが――……」
 荒い息を零すユニを、男は冷めた目で見下す。
「――たとえ一度でも男を知ったなら話は別だ。一人相手しようと五人相手してようとな」
「……何が、言いたいのかしら」
「てめェは売れねェってことだよ、女。どうせそこにいる船長とハメまくってんだろ」

 瞬間、ユニは抑えられていた脚を振り払って男の頬を蹴り上げた。今度は爪先が男の頬をしっかりと突き上げる。
「私のことを侮辱するのは構わないわ。でも、私たちの船長を侮辱するのは許さない!」
「っ、てめェ……!!」
 がッ、と音を立ててユニは腹を蹴られ咳き込んだ。男はそのまま彼女の頭を勢いよく踏みつけると、下卑た笑みを浮かべた。

「俺はまだやることが残ってるんでな。あとの処理は俺の部下たちに任せるとしよう」
 男がそういうと、今まで入口の付近に控えていた数名の乗組員たちがユニの手錠に手を掛ける。その先の展開は今まで以上によく解った。
 海賊船に女性は基本的に存在しない。グランブルー海賊団には船長の人徳からかユニや船医のルージュ、バンシ―たちといった女性が乗船しているし、そもそもゾンビたちにそういった欲はあまりないらしい。女好きのシルバーなどは寄港した際に店に行くなどして発散しているらしいが。一般的な海賊船、しかもヒューマンばかりの船とあっては溜まるものも溜まるだろう。
 奴隷としての商品価値がないのならば、船の慰みものとして扱った方が得をする。
「ユニ! 逃げろ!」
 拘束は外れない。今でこそ実体化しているがウンディーネの本質は水霊、つまり水そのものだ。流動体になってしまえば鎖も何も関係ない。水霊の姿に戻るだけなら大した魔力も使わないから逃げることくらいは可能だろう。
 ユニもナイトミストの言葉を理解したらしく、毛先が少しずつ水に戻り始める。

「おい、女」
 いつの間にか男はユニの頭から脚を離し、今度はナイトミストの首筋にナイフの刃を当てていた。
「てめェが逃げるのは勝手だが、逃げたらこいつを殺す。いくら不老のヴァンパイアだとしても、頸動脈切ったら死ぬだろ?」
「……っ!」
「俺のことはいいから! 逃げろユニ!」
 ナイトミストが身を乗り出したからかナイフの切っ先が首をかすめて血が一筋の線を描く。それを見て、ユニは水霊化のための魔力供給をストップして大人しく身体を投げ出した。
「ミストを殺されるくらいなら、私がこいつらに犯された方がマシよ」
「……ユニ、お前、」
「野良犬に噛まれるのと変わりないわ」
 諦めたようなユニの笑顔が、ナイトミストの胸に突き刺さる。

 コンマ数秒後、ユニの顔から笑みは消え去った。男たちの一人が血走った屹立を彼女の口に無理やり押し込んだからだ。ブラウスのボタンが引き千切られ、外気にさらされた胸がたぷんと揺れる。床に押さえつけられたユニは苦しそうに息をした。口腔を犯すものの先端が喉奥を蹂躙し息がし辛くなっているせいで左目には涙が浮かんでいる。
 先程男の指が中途半端に拡げた秘所に、一人が無理矢理自らのものを突っ込んだせいで彼女の腰ががくりと揺れた。先走りで赤黒く光るそれを根元まで受け入れることは叶わないにも関わらず、男は行為を止めずに続けようとする。
「うわキッツ」
「そりゃそうだろ、慣らしてやれよ」
「面倒じゃねェか、でもやっぱりウンディーネは格別だな」
「マジかよとっとと代われ!」
 ぐり、と胎を抉るようにそれが動く。無理に拡げられたことでどこかを切ったらしく、ユニの破れた白いスカートに赤い血が零れた。
 口淫を楽しんでいたらしい男が彼女の髪を掴んで薄い唇を根元に寄せる。結果的に屹立の先はより一層口内を抉り、そのまま抜き出すことはなく喉に向かって白を弾けさせた。口腔に留まりきらなかった白濁が口の端から溢れ、白い胸元にどろりと垂れる。残りを吐き出そうとするユニの口に絶え間なく別の男のものが含ませられる。残った白濁を仕方なく飲み込んで、彼女は抵抗することなく男の逸物に舌を這わせた。
 ウンディーネは皆一様に体温が低い。だがそれは種族性であって屍体のような冷たさとはまるで違う。行為中にどうしても火照る身体に心地良い快感をもたらすが故にウンディーネは名器と称され、高く売買される。

 既に緩み始めたユニのそこをじゅぶじゅぶと淫猥な音を立ててわざとらしく奥まで押し込むと、もう限界だったらしい男の自身は最奥に全てを放った。瞬間、舌に意識を集中させていたユニの身体ががくがくと揺れる。望み通り中で果てた男は萎えたそれをずるりと引き抜くと、あろうことかドロリとした表面をユニの服で拭った。
 奥に放たれたこともあってかユニ自身も全身を揺らして一度達する。身体をよじったせいか、口に押し込まれていたものも白く弾ける。さすがにそれをも飲み込むことは出来なかったらしく、荒く咳をしながら床にそれを吐き出した。
 そんな光景を、ナイトミストは見ていることしか出来ない。

 口内で果てた男を押しのけるようにして別の男がユニの身体を跨ぐ。呼吸の度に上下する胸の中央に天を向いた逸物を挟み込むと、鎖でつながれた両手にそれを支えさせた。身体を起こしたユニは先走りでぬめる竿を両胸で扱きながら、先端に舌を押し込む。交代した時点で限界だったらしい男は体勢を変えることもなく吐精する。吐き出された白濁はユニの顔や髪に飛び散り、彼女は気持ち悪いといったふうに眉をひそめた。
 胸にどろりとしたものを残して離れる男を嘲笑うようにユニは男を見上げる。
「げほっ……、そんな風にがっつく、から、モテないのよ……この早漏」
 口に残っていた精液を床に吐き出してユニは言う。先の宣言通り本当に野良犬に噛まれた程度にしか思っていないらしい。彼女の瞳は、いまだ挑戦的なままだった。

「黙れ!」
 男がユニの肩を強く突き飛ばして床に組み敷いた。男たちの吐き出したものや自身の愛液で溶けそうなくらいにドロドロとしたそこに息つく間もなく昂ぶったものを押し込む。内壁を抉るようにピストンを繰り返す動きに合わせて今まで抑えていた矯声が上がるが、その声はナイトミストが普段聞くものよりひどく苦しそうだった。
 最奥まで到達したそれが異常なほどに膨張しているのがユニには嫌でも解る。男はニヤリと笑うと彼女の腰をぐっと掴んで勢いよく白を放った。
「ん、っあ、ぁ……ッ!」
 予期していた反応と違ったのか、男は舌打ちをしながら内壁に締められる自身をぐり、と動かそうとする。

 だがその時、派手な爆発音が耳朶を打つ。上の階から聞こえてきたその音は、恐らくナイトストームたちが戻ってきた音だろう。
 男たちは配備に戻るため、ユニの存在などまるでなかったかのように床に放り出して、急ぎ足で部屋を出てしまった。

「ユニ、」
「……なんて顔してるのよ、ミスト」
 貴方は無事だったから良いじゃない。その言葉がより一層ナイトミストの胸を締め付ける。

(良くなんか、ない)
 全身を汚されても笑うユニを、救ってやることすらできなかった。

「ミスト! ユニ! 無事か!?」
「ストーム!」
「甲板の制圧はあらかた終わった。例の術師とやらもコキュートスが氷漬けにしたぜ」
「そう……ストーム、私の杖、見なかった?」
「ちゃんと持って来たよ。船長室に置いてあった」
 会話をつづけながらナイトストームはまずナイトミストの手首を締める縄を切り、それからユニの腕に巻きついた鎖をも斬ってしまう。触れない方がいいと解っているからか、ユニの姿については何も言わなかった。
「ありがとう」
 ナイトストームから自らの得物であるアイアンメイスを受け取ると、ちいさく詠唱をしてから水霊術を放った。船室の壁が割れて這入って来た海水が渦を巻き彼女の全身を包み込む。水が霧になった頃には表面上の汚れはすべて落ちていた。

「……悪い、ユニ」
「私は大丈夫だって。それより二人共、早く戻りましょう」
 言っている間にも壁の裂け目から海水がどんどん溢れている。このままでは船は数分とせずに重みに耐えかねて沈むことだろう。

 一歩踏み出したが行為の反動かユニはその場に膝を付く。杖を支えに立とうとした彼女の膝裏に手を差し込んで、ナイトミストは軽々とユニを抱き上げた。
「ちょっ、ミスト!?」
「……これくらいやらせろ、バカ」
 赤く腫れたナイトミストの手首がユニの肩を支える。切り裂かれたスカートから覗く太腿に当たる海風が、何故だか心地良かった。



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