「茹でたバスカークみたいな顔してるぞユニ」
「どんな例えですかルインさんの馬鹿!」

甲板から駆け下りていると、美しい金髪を纏った黒い幽霊。
ルイン・シェイド。グランブルー一の戦闘狂と呼ばれる女性剣士である。
そんな彼女は何やら剣も盾も担いで、甲板へと上がる。

「甲板で何かするんですか?」
「あの剣豪の腕筋は悪くない、試しに行く」
「…相変わらずですねえ」

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「おおユニ」
「あっジンさ…シルバーさんも一緒ですか」

赤と銀の対称的な二人が、日の入らない暗い部屋で何やら話している。

「ところで何してるんです?すごーく怪しいですよ」
「ああ、ミストに少し頼まれたんだ」
「航海路が決まらねえと俺も仕事できねえしな」

風を操る悪魔と航海士。
今までグランブルーに航海士がいなかったのも、まあ彼がよく働いていたから何とかなっていたという節もかなりあるのだが、やはりシルバーの加入は喜ばしいものなのだろう。
どことなくいつもよりやる気のあるジンは、鼻歌を歌いながら窓を開けようとする。

「…おい」
「ああ、悪い悪い…吸血鬼ってのも大変だな。船長達はやっぱり違うもんなのか」
「…ミストらは真祖だからな、私も太陽は嫌いじゃないが、今は苦手だ」

ふと昔の事を思い出す様に、そっと何も映らない窓を眺める。
ユニは思い出したかの様に、ちょっとした疑問を投げかける。

「ストームさんに聞いたんですけど、シルバーさんって昔ヒューマンだったって本当なんですか?」
「…私に興味があるなら部屋でゆっくり聞くぞ?」

ユニの顎に手をかけ、上から微笑む様に耳元で囁く。
先程のストームともまた違った、彼の接近ぶりに抵抗を始めると、やれやれといった様にその手を離した。

「…もう!シルバーさんに興味なんてないですよーっだ!ただ一クルーとして気になっただけでっ」
「それは残念」

きいいと喚くユニを他所に、談笑を始める二人の船員。
自分の方がこのグランブルーでは先輩に当たるし、少しぐらい敬意があってもいいのに、とふて腐れていると、シルバーはこの惑星クレイ全体を映し出す地図を広げて問いかけた。

「ユニ、私はこの国へは行った事がない。どんなものか聞かせてもらってもいいか?」
「…ようやくわたしを頼る気になりましたか!別にいいですけど、ふふ」
「(…相変わらず単純な奴だなあこいつ)」

多分詐欺とかに真っ先にかかるタイプの奴だな、とユニの行く末を心配する悪魔が一人。
グランブルーの守護者としてこのクルーも守らなければ、とより一層グランブルー一の苦労人の苦労は増す。



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