グランブルーに新しい船員が来てから数日後。
徐々に馴染んできたこともあり、早くも甲板ではキッドがはしゃぎあっちだこっちだと指揮している。
そんな環境の中、すやすやと居眠りをする豪奢な衣装の男に、ユニは声をかける。

「ストームさん、もうすぐ日が登りますけど」
「…?ああ、ユニか」
「ストームさんヴァンパイアですよね?このまま寝てたら死んじゃいますよ」

吸血鬼は日光に弱い。
古来より受け継がれたこの性質は、度々吸血鬼の存在を脅かしている。
もっとも船長ミストやキッド程の真祖ともあれば、その弱点も克服可能な様だが。

「そういえば言ってなかったかな?俺はハーフだから、日光はそんなに脅威な存在じゃないよ」
「えっ、そうだったんですか!じゃあ半分はわたしと同…、何でもないです」

うっかりと口を滑らしたユニを見て、そんなこと全員知ってるよ、とでも言ったかの様な顔で笑う。

「え、あ、その…思わず、あの…半分ですけどヒューマンがいたのが嬉しくて」
「はは、まあ俺も血は吸うし大体ヴァンパイアだけどね。…そうだ、あとシルバーは元々ヒューマンだったらしいよ」

思わぬところに共通点。
旧グランブルーの船員は殆どが一目見てわかる様なスケルトンやゴーストだったので、今回の船員の中にヒューマンがいればなあ、と軽い期待をしていたユニは目を丸くする。
まあ完全なヒューマンは誰一人いなかった訳だが。

「あの人いっつもわたしのことからかって遊んでるんですもん、ひどいですよ」
「シルバーは俺に劣らず女性が好きだからなあ」
「…自分で女好きって認めないでくださいよ」

そんな彼は今航海路を必死に考えてくれてるとはいざ知らず。
よくもまあこんなんで今までやってこれたな、とこの間言われたし、少し苦手なのかもしれない。
ミストも流石に出る言葉もなく、ただただ彼の功績に驚くばかりだ。


「あ、そうだ。ストームさんって剣豪さんなんですよね」
「自称するものでもないけどね、そういう風に呼ばれる事もある」

少し照れた様子で、頭に手を当てながらはは、と笑いを零す。
鞘から剣を鋭く抜き、目の前で振るう動作を数回繰り返す。

「おおー!かっこいいですね!」
「女の子に褒められると何だか照れるな、ユニもやってみる?」
「えっ、いいんですか!やりたいです!」

ストームの剣捌きに目を輝かせていたユニは、ストームから愛用の細剣を受けとり、そっと振るおうとする。
しかしバランスが悪いのか、細剣なのに意外と重かった事も作用し、上手く振り下ろすことができないらしい。

「あ、これ意外と重いんですね…えっと」
「手に力を入れすぎないで、重心を揃えるんだよ」
「…?つまり、どういうことですか…」

こうやるんだ、ストームはそう言ってユニの手の上から、片手を柄にかけ、軽々と振り下ろす。
余りに簡単そうに振るうので、ユニは驚嘆の声をあげることしかできなかった。

「ほら、俺が握ってるから振ってごらん?」
「えっ、あ、はい…よいしょっ」
「上手上手、銃もいいけど、剣もやっぱり気分がいいと思わない?」

爽やかな笑顔でそう話すストームを見て、こちらも自然と笑みがこぼれる。
しかし自分の手に意識を向けると、そこには重ねられたストームの手。
瞬間林檎のように真っ赤に染まった頬を見て、ストームは笑い出す。

「ははっ、君はまだまだ子供だね」
「なっ、そんなこと、ないですよ!」
「そうかな?じゃあ失礼、お嬢さん…」
「えっ……あ、あの…」

一瞬の内に剣を鞘へ収め、ユニの前に傅き手首にキスを落とす。
今までされたことのない姫のような扱いに、ユニは戸惑いさらに頬を赤く染める。
くらくらとした様子で見つめるユニに、ストームは優しく囁いた。

「続きは君が大人になってからだ」



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