「おいユニ、起きろ」
コンコン、と控えめなノックの音で、少女ユニは目を覚ます。
厳重に何個も鍵が付いたその部屋で、ぐっすりと眠っていた少女は、一つ一つ丁寧に鍵を外し扉を開けた。
相も変わらず暗い船内に、少し目を細めれば、目の前に優男の姿が見える。
「随分とよく寝てたな、今日は新しいクルーを迎えるって言っただろ？」
「…準備してたら疲れちゃって、思わず寝ちゃってましたよ、船長」
軽く溜息をついて笑う、長い黒髪が印象の優男、彼こそがこの深淵海賊団ことグランブルーを統べる船長こと、キャプテン・ナイトミスト。
そんなグランブルーに、今日は新しいクルーが来るのだった。
聞くには何でもナイトミストの親戚だとか、他にも医者や料理人、今までいなくて致命的だった航海士までも来るらしい。
当然新しく来るクルーを楽しみにしていたユニは、船をせめても明るい雰囲気を出したいと言って歓迎会のような準備をしていた訳なのだが。
「ていうかあと5分で着くから、せめて身嗜み程度は整えておいた方がいいぞ」
「えっ、えええ…もっと早く起こしてくださいよ！やだもう船長の馬鹿！」
慌てて寝癖を直すユニに、ナイトミストはあるものを手渡す。
それは彼女の瞳の色と同じ、サファイアブルーに輝いたの薔薇の髪飾りだった。
「わ、かわいい。これどうしたんですか？」
「お前も今日からこのグランブルーで先輩になるんだ、そんな子どもみたいな顔じゃ決まらないだろ？」
「子どもみたいってのは余計です！」
ユニの髪に優しく触れ、髪飾りを付ける。
ナイトミストは満足そうに眺め、ユニを抱き上げ甲板へと向かう。
するとそこには既に、ぞろぞろと大小様々な新しい船員たちが到着していた。
「久しぶりだな、キッド」
「お前こそな！今日からこの船はオレ様のもんだぜ！」
突然ゴーストシップを自分の物宣言したその少年は、にやりと笑いながら船の中へと入って行く。
ナイトミストは呆れ笑いながらも、他の船員へ目を向ける。
「俺がグランブルーの船長、ナイトミストだ。堅苦しいことは俺も面倒だ。簡潔にまとめるぞ、これから世話になる、よろしく頼むぜお前ら！」
簡素な挨拶を終えると、船内からも船員が現れ、酒を持ち出す者も出た。
今夜は酒宴かな、なんて未成年のユニは少し呆れた顔をしながら宴の準備へと足を運んだ。
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