「アルエちゃん」
「はい、なんですか?」
「愛してる」
「ふふ、有難う御座います」
「信じてなさそーな言い方だわねぇ」
「そんなことはないですよ、ちゃんと信じてますって」

いつものやり取り。
毎回同じことを言い合っているが、それすらも最近は居心地良く感じられる。




「もし」
「はい?」
「俺様が裏切ったりしたら、どうする?」

レイヴンの問いにアルエは暫く悩んでいたが、漸く顔を上げたと思うとにっこりと笑いながら

「レイヴンさんはそんなことしないって分かってますから。考えられないです」

と言った。



――そんなことはしない、か…。


笑顔でこちらを見るアルエに対して、罪悪感を抱いた。




(本当は裏切りたくなかった。アレクセイの言いなりになるくらいなら死んだ方がマシだったのに)

(それが出来なかった俺は、なんて間抜けで、生に対して貪欲な人間なのだろう)


「…ごめんね、アルエちゃん」
「はい?何か言いました?」

聞こえていなくて良かった、とどこか安心している自分に対して苦笑する。

「何でもないわよー」

慌てて笑い、取り繕う。

「アルエちゃん」
「なんですか?」
「…愛してる」

愛を囁いて誤魔化そうとしているのが何とも滑稽だ。
だが、今彼女にしてあげられるのはこれくらいで。

恐らく、彼女の笑顔を見るのはこれが最後であろうと自負して――。




(君の笑顔が消えるまで、あと数日)



慟哭

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