シュヴァーンと呼ばれた男。
姿形、口調、態度、全てを欺いているつもりだろうが、アルエは正体が分かってしまった。
『どうして…。レイヴンさん、なんで此処に…』
以前から、忽然と姿を消すレイヴンに疑問は持っていたが、まさか、ギルドと敵対している筈の帝国側と繋がっていたなんて思いもしなかった。
目を見開いてシュヴァーンを見つめるアルエに気付いたのか、アレクセイがくつくつと可笑しそうに笑う。
「シュヴァーン、どうやらお前の正体に気が付いているようだが?」
「そうですか…。関係ありません、接点があった訳ではありませんから」
「はたして、それはどうかな…」
シュヴァーンにも聞こえないくらいの声でアレクセイが呟くと、アルエの前に腰を下ろす。
「さて、君には幾つか尋ねたいことがあってね」
「…知りません」
「まだ何も聞いてないのだがね…」
やれやれと首を横に振り、呆れたような表情を見せる。
「まあ、そう簡単には吐かないとは思っていたよ」
「拷問しても同じですよ、私は何も知らない」
「それはどうだろう?」
隊長首席と呼ばれた男の正体