「レイヴンさん…」
「どうしたの?」
「何で私、押し倒されてるのですか?」
――ここ、学校ですよ。
と言う声なき言葉は伝わっただろうか。
いや、どうみても伝わっていないようだ。
その証拠にレイヴンはにこにこと笑ったまま、退こうとはしない。
「アルエちゃんの制服姿にムラムラしちゃった」
「か、勘弁してくださいー!」
「だめー」
ガバッと音がする程の勢いでレイヴンはアルエに抱きつく。
嫌ではないけれども、場所が場所なだけに、抵抗する力も強まる。
「が、学校ですよ!しかも保健室!」
「だから?」
それがどうしたとでも言うような態度で首を傾げられる。
「いつ、誰が来るかもわからないのに、その、あれをするのですか…?」
「そうだけど?」
当たり前だという態度にアルエは頭を悩ませる。
「まー、アルエちゃんの可愛い声を他の生徒に聞かせるのはちょっと嫌だけどねー」
「論点ズレてますって…」
「誰かに見られそうになったり、聞き耳立てられると興奮しちゃうでしょ?」
にやりと笑うレイヴン。
反射的にレイヴンの顔を目掛けて殴りつける。
「ぶふぇっ!」
「帰りますからね!」
殴られた反動でレイヴンがベッドから転がり落ち、アルエはその隙に保健室の入り口まで駆ける。
「いたー…、本気で殴るこたぁないでしょー…」
泣きそうな顔でレイヴンが肩を落とす。
「…家なら」
「は?」
「家でなら、大丈夫です、から…」
頬を赤くしながら呟くアルエを見、レイヴンの表情がパッと明るくなった。
「んー、アルエちゃん愛してるぜ!」
「いたい、いたいです!」
あまりの嬉しさにアルエを抱き締め殺しそうになる。
アルエのうめき声を聞き、レイヴンは笑いながらアルエを解放する。
「じゃー、今から帰ろうか」
「は、はい!?」
「さー、帰るわよー」
「ちょ、午後の授業は!?」
「(ムラムラして)死にそうなんで帰りまーすって言って帰るわ」
「え!?」
「はい、アルエちゃんも帰るー」
ひょい、とアルエの身体を抱えると、颯爽と保健室から出ていった。
――変な事言うんじゃなかった!
続々々・せんせいごっこ