「おっさん」
「どーしたの、青年?」
ユーリが顔をしかめながら、道具袋を差し出してくる。
「な、に?袋がどうかしたの」
「おっさんだろ、リキュールボトル無駄に使ってんの」
「はあ?」
一体何の事かわからない。そもそも、何故真っ先に自分が疑われるのかもだ。
「15個補充したはずなのに足りねえんだよ」
道具袋を受け取り、中身を確認する。
「1、2、3…8、9…足りないわね?」
「だからそう言ってるだろ…」
苛立たしげにユーリが肯定する。
「それで?なんでおっさんを疑ってんの?」
「おっさんが道具袋を漁ってたって皆言ってんだよ、それにリキュールだし」
それだけの理由で疑われなければならないのかと、肩を竦めた。
そもそも道具袋を漁っていた理由は合成に出すための素材を探していただけであって、まったくの濡れ衣だ。
「あのね、青年」
「二人ともどうしたの?」
やや険悪なムードが漂う所にカロルが近寄る。
「ああ、カロルか…いや、最近アイテムの減りが早すぎるから、おっさんに今事情を聞いていたんだよ」
――事情を聞くっつーか、完全に疑われてるんだけどね。
ひっそりと溜め息を吐くレイヴン。
「…何が減ってるの?」
「リキュールボトルだな」
「…ご、ごめんなさい、それ、ボクなんだ…」
「…は?」
「…どういうこと?」
カロル曰く、状態異常を仕掛けてくる敵の対策の為にリキュールボトルを飲んだらしいのだが、あまりの美味しさに、バレないようにこそこそと飲んでいたらしい。
確かにアルコール分はあまり入っていないものではあるが、カロルが飲んでいたというのだから、驚きだった。
「そうか…、でもな、カロル。アイテムを無駄に使うのは良くないからな。金だって無限にあるわけじゃねえし」
「…うん」
「勝手に浪費すんなよ」
「ごめんなさい…」
「…てなわけで、この話は解決だな。悪いな、おっさん。疑ったりして」
――えええ、それだけですかー!?
散々人を疑っておいて、それで済むの!?
あっさりとあしらわれたことに開いた口が塞がらない。
というよりも、この扱いの差は何なのだと叫んでやりたかった。
「ちょっと、青年」
「なんだよ?」
「それで終わりなわけ?人を散々疑っておいて」
「だから悪かったって…」
「…ちょーっと、お仕置きしてやらないとねぇ?」
「…な、ちょ、バカっおっさん、何をする…ッ」
「ちゃんと誠意の籠った謝罪をしてもらおうか」
ひょい、とユーリの身体を軽々と持ち上げると、足早にレイヴンが宿泊している部屋へと向かった。
「レイヴン、何をする気なんだろう…」
その場に取り残されたカロルが不安げにレイヴンと抱えられたユーリの姿を眺めながら呟いていた。
――ユーリ、大丈夫かなぁ。
レイユリ痴話喧嘩