04

冬組の旗揚げ公演前だから、冬組が使ってない時間を他の組がローテーションで使ってる。ちなみに今は冬組は監督とミーティング。そして春組は筋トレや発声とかの基礎練。これを頑張れば天使ちゃん…ゆきちゃんの動画。


「今日のアンタ…気持ち悪い……」


いつもはやる気ない俺が真面目に取り組んでいたら真澄からきつい一言をもらった。


「たしかに至さん昨日からテンション高いっすよね……。なんかいいことあったんすか?」


「俺はいつでも真面目」


「オー、イタル、嘘つきはエンマンタイシャで舌を抜かれるネー」


「閻魔大王な……」


シトロンと綴のコントを後目にトレーニング。使える時間が短いから早く動画が見れる。……違う、集中して練習に臨む。


しかし筋トレきっつ……マジ無理……もう帰る……。


そう思いながらトレーニングを続けると冬組と交代の時間になった。


「よし、はい、おつー」


「え、あ、おつかれさまです!」


颯爽と稽古場を離れる。
汗ヤバ…シャワーだけ先浴びよ……。


「おつー」

「あ、至くん。おつかれさまです」


「あぁ、おつかれ」


「おつかれ、至くん」


「……スピー……」


「おつかれ。ふふ、密がミーティング中に寝ちゃってね」


東と誉が密を支えながら稽古場に入っていく。
……冬組大変だな。うちの組じゃなくてよかった。あんなの無理ゲー。
自室に戻ってタオルと着替えを持って、ついでにパソコンの電源を入れる。
これで準備OK。戻ったらすぐ見れる。


Toeet
たるち @taruchi_39
推しができる予感しかない。
とりまシャワー


呟いてスマホを部屋に置いた。
浴室に行ってる時も、シャワー浴びてる時も、考えていたのは彼女のことで。これって恋…?なんて思ったりして。
濡れた髪を拭きながら部屋に戻ってPC前待機。そしたらトイッターの通知が鳴ってアプリを開く。同時にサクサク動画も開く。


Toeet
ゆき @yuki_39
新作撮れましたー!編集したらアップしまーす!


「マジか。編集できんの」


Toeet
たるち @taruchi_39
@yuki_39 新作楽しみにしてます。


新作wktk。そう思いながら彼女の動画タグを検索して見てない残りの二つのうち一つを開く。


【ゆきが】ル カ ル カ ★ ナ イ ト フ ィ ー バ ー【踊ってみた】


サムネイルが……童貞を殺してくる……。
肩がふわってしたシャツをハイウエストのショートパンツに入れて、オーバーニーハイ……だと……。完全に狙われてる……サムネホイホイ。タグにもサムネホイホイ……。
まあ俺ホイホイされるけどね。


『ダーメダメよ』



満開の笑顔のスタートにすでに職人がついていて、彼女の周りにハートマークが飛んでいた。
コメ欄も色鮮やかで可愛いがつまっていた。


「可愛い―…」


零れた言葉は画面に吸い込まれるように消えていった。1人部屋だしいっか、そう思って見た後、コメントを消してもう一度。
最初の笑顔は何回見ても可愛いの一言に尽きる。
たぶん今の状況を誰かに見られたらひかれるくらい、表情が緩んでいる自覚はしている。異論は認める。
さっきはほんとに可愛いとしか思ってて、見てなかったけど、ラスサビ前のところで表情が大人っぽくなって、雰囲気が変わった。動画越しにそれが伝わるって凄い。語彙力ないけど、凄い。ただその一言に尽きる。
そうやって、動画に飲まれるように見た。


Toeet
たるち @taruchi_39
まじゆきちゃん推す……


そう呟いたら土曜日だからかふぁぼリトがすぐついた。
リプライもちょいちょい来てたけど知り合いはなかったのでスルー。
……してたら通知票が。


Toeet
ゆき…………さん他79人がトイートをふぁぼしました。


「え、マジか……」


思わずスクショした。

Modoru Main Susumu
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -