05

久々に人前に立つ。その高揚感に心が高鳴った。
集客が見込める場所、そして今の時間。私が選んだのはGOD座からそこまで離れていない距離の路上。


「よし」


開幕だ。



空を見上げる。
1つ、1つ、星を捕まえるように手を出す。


「私は、ここで生きていくんだ……」


そっと胸に手を当て、集めた星を大切に抱き締める。表情も、憂いを持って微笑んで。
そしてその星たちをそっと開いて降ろしてあげる。


「ここには、たくさんの夢が光っている……ああ、ほら、あそこにも」


足を止めた観客の方に手を伸ばし柔らかく微笑む。


「寒い夜は……もう終わり。暖かい部屋と温もりの食事……そして笑顔の私と、あなた」


GOD座に入れなかった人はどれだけいる?あなたが欲しいと願った板の上はどこにある?


「さあ、咲かせよう……満開の花を。私と共に……」


一歩、二歩、ゆっくり歩む。
周りの空気を暖めて、ここはあなたという花の咲く場所。
お客さんぎりぎりまで行って振り返り下がる。優雅に堂々と。ここはたくさんのスポットライトを浴びる場所。


「ここで咲かせよう」


ふわり、笑う。
両手をゆっくり開いて迎え入れるように。
余韻を残してそのあとお辞儀をする。


「ありがとうございましたー!」


拍手を浴びながら笑顔で手を振る。


「MANKAIカンパニーでーす!劇団員募集してまーす!よろしくおねがいしまーす!」


そういうと何人か話しかけてくれて、少し説明をする。
知名度が低いからか、すぐの返事はもらえないけれど、前向きに検討してくれるらしく念のため準備しておいたビラ渡す。客演でもいいから今は人がほしい。


「ありさ……」


声をかけられて振り向く。そこにはガタイのいい見慣れた人が立っていた。


「丞……」


「久しぶりだな……お前の芝居、よかった」


「ありがとう。GOD座の王子様にそう言ってもらえるなら私の腕もまだ鈍っちゃいないね」


そう答えると、複雑そう顔をした。


「今はそこにいるのか」


「うん。演出家してる。板の上にはもう立たないけどね」


「そうか……」

「丞も、頑張って。気が向いたらうちの劇団もよろしく」


そう笑えば、丞も頷いた。


「それじゃ、私他のメンバーのとこに戻るわ。じゃあね」


「ああ、またな」


『また』出会おう。必ず。
そうして、丞と別れて他の皆がいるであろう天鵞絨駅前に行った。



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