04

劇場を出て4人で歩く。


「いやー、神様幸夫様幸夫さんの娘様!まさに天の助けです。これで、劇場は救われました!さっきのあの人の顔見ました?こめかみぴくぴくしてましたよ。ぷぷぷっ」


「……伊助、本当に能天気なバカだな」


「え?」


「安心しきってるところ悪いんですけど、これから新入団員を見つけないと!」


申し訳なさそうなお客さんの顔にこっちが申し訳なくなる。


「え!?でも、幸夫さんのツテと虎の巻があるって……」


こいつ……本気で信じてたのか……。


「あれはあの場を乗り切るためのはったりです」


「ええ!?」


「嘘だったんですか!?」


「当たり前でしょうが!なんでも人に任せない!咲也も!純粋もいい加減になさい!……本当にごめんなさい」


お客さんに向かって頭を下げる。そしたら慌てて手を振られた。


「謝らないでください!頭を上げてください……。う、ウソというかお芝居です。ストリートACTみたいなものというか……」


「そんな……それじゃあ、新しい団員は……」

「いません」


「いるわけないでしょ」


「えええええ……」


本気で肩を落とす伊助に思いっきり肩パンした。


「いっ……」


「劇団はやっぱりつぶされちゃうんですか……?」


「そうならないために、今から死ぬ気で劇団員を探すしかない」


お客さんがはっきり言うことに頷く。


「今からなんて無理ですよ〜!」


「伊助、もう一発ほしい?」


そう言うと、伊助は首を勢いよく横に振った。


「無理かどうかは、やってみなくちゃわからないじゃないですか!」


「無理です。昔の団員は皆いなくなって、新しい団員も結局一人しか入らなかったし……。僕は全然人望ないし、ありさちゃん舞台に立たせれないし、劇団の評判も最悪だし……。こんな今の劇団に入ってくれる人なんて……うじうじ……って痛っ!」


ムカついたからもう一発お見舞いしておいた。


「あの、オレ、何ができるかわからないけど、手伝わせてください!せっかく入った劇団をなくしたくないですし、何もしないよりはマシですよね!」


「咲也のほうが前向きなんだけど、伊助?」


「だって……」


「だってもくそもない!」


またうじうじモードに入ろうとする伊助を一喝する。
ほんと、こいつが支配人でいいのか。不安だ。


「ほら、この子もこう言ってーーええと、キミ、名前はなんていうの?」


「佐久間咲也です!花が咲くの咲也です!」


「咲也くんか。よろしくね!それから、ええと……」


「九条ありさです。MANKAIカンパニーの演出家を担当しています」


「ありささん。よろしくお願いしますね」


「よろしくお願いします!」


咲也が元気に返事をし、私は微笑んだ。
歳も近そうだし、話もできる女の人ってありがたい。


「ほら、新人の咲也くんが頑張ろうとしてるんだから、支配人もしっかりしてください」


「うう……わかりました。どうせだめだろうけど、やってみましょう」


ネガティブモードな伊助は本当に腹が立つ。シカトだ。シカト。


「それで、どうやって団員を探せばいいんでしょう?」


「ビラ配りでもします?」


咲也の質問に伊助が提案するも、それで今までダメだったってこいつの脳内にはインプットされてないのかな……?


「うーん、やみくもに声をかけても、効果は低そうだし……」


手っ取り早く、人を集めれる方法。


「ここは、お芝居の街だよ」


「そうですね!ストリートACTをするのどうですか?劇団の宣伝にもなるし、演劇に興味がある人が集まるはず」


「なるほど!いいですね!オレ、ストリートACTってやったことないんですけど。即興劇……エチュードってやつですよね。内容はいきあたりばったりなんですか?」


「ある程度はテーマを決めた方がいいと思う。今回は劇団の良さを伝えるようなストリートACTをしよう!」


「劇団の良さ……」


「うちの劇団の良さかー……」


腕を組んで悩む。
芝居に秀でてるわけでも、脚本が良いわけでもない、うちの劇団の良さ。


「支配人、何かこの劇団に入るメリットはありませんか?」


「そうですね……団員寮があって、僕が腕によりをかけて作った食事が朝晩二食付きます!」

「新人劇団員は収入が少ないから、生活費が浮くのはかなりのメリットですね」


伊助のご飯はメリット……か?


「えっと、確かに、そこはメリットなんですけど……」


「ぞれに専用劇場があるので、練習場所には困りません!」


「ふむふむ、それじゃあ、その辺りを盛り込んだ内容でストリートACTをしましょう。まず登場人物は……」


「あ、私他のとこでやってきますよ。範囲は広い方が集客もしやすい」


「え、ありさちゃん一人で……?」


不安そうな顔をするお客さん……って名前聞いてなかった。


「うん。お姉さん、お名前は?」


「た、立花いづみです」


「いづみさん、任せます」


「え、あ、はい」


私はいづみさんに二人を任せ、その場を後にした。



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