◎ある提案
「ありがとうございました〜〜!!」
いつもよりテンションの高い同僚の声に、少し笑う。
「あー!ほんとかっこよかったぁぁ〜〜…」
「ね!ほんとこのコンビニにしたかいあったっていうかー!」
キャッキャと話す二人を見て、そんなに有名なアイドルなのか、と思った。
「あ、そういえば、天くん、藤堂さんの名前呼んでなかった?」
「…気のせいじゃないですか?」
「そうかなぁ…あー!でもほんと八乙女事務所の近くで働いててよかった!」
「八乙女事務所?」
「藤堂さん知らないの!?ここの裏、八乙女事務所だよ!TRIGGERの所属事務所!」
「え、あの無駄に胡散臭いビル?」
「「豪華な!事務所でしょ!」」
「…あ、はい」
力強い二人に押される感じで頷いた。
そうか、そんな近くに天はいたんだ。知らなかった。
「もう!ほんとに藤堂さんは知らないんだね…」
呆れられたけど、ほんとに興味がないので仕方がない。
「あ、今度TRIGGERのライブ!チケット余ってたじゃん?藤堂さん行こうよ!」
「え、あ、私は…」
「「行くの!」」
「あ…はい…」
なんで今日のこの二人はこんなにも強いのだろうか…。またしても押される感じで頷いた。
…それにしても天のライブか。複雑。
私は、その天をまっすぐ見れるのだろうか。
今まで背けてたものを、見て、感じて、そして私は何を思うんだろう。
――やっぱり遠い。