私たちのアイドル

幼い頃、私には双子の幼馴染がいた。
小さなお店をやっていたその家は暖かくて、私の理想の家だった。
寂しい時、悲しい時、いつも二人が暖かく迎えてくれたんだ。


「ゆきほちゃん、一緒に遊ぼう」


「陸はすぐ無理するから、おとなしくしてるんだよ」


「わかってるよ、天にぃ」


七瀬天、陸。


この双子が、私のよりどころだった。
天の歌声とパフォーマンスはすごかった。私たちを楽しませようって一生懸命だったから。
それを笑顔で見て、聞く私と陸。
いつも楽しい時間をくれたんだ。


私の家は、もう家庭が崩れてて、暖かさなんてなかった。
そんな私を七瀬家はいつでも迎え入れてくれたのだ。
本当の家族のように接してくれた。
この時間がいつまでも続くって、信じていた。


そう、信じていたんだ。


「え、嘘」


「本当なんだ…」


涙を目にためて、陸は私に告げた。


『天にぃが、家を出た。あの人に、ついて行っちゃった…』


一気に、私の中で、何かが崩れていった。
何も考えられなくて、膝から崩れると、陸は私に縋りつくように抱き着いて泣き出した。


それから私は七瀬家に行かなくなった。
荒れて、陸に何度も心配させた。
でも、あの日から、何を信じればいいのかわかんなくなってしまっていたんだ。


そんなある日、たまたま見かけたテレビに、見慣れた姿を見た。


「天…」


そこには、私たちのアイドルが、皆のアイドルとして映っていたのだ。



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