うーんと背伸びして | ナノ

 距離感を考える君

あれから、なんだか距離を感じてしまった私は彼から帰ってきたラビチャを開けないでいる。
これは私の劣等感からなのか、それとも違うものなのか。
私から零れてしまいそうな言葉は、とても我儘で、自己的で、それを打ち砕かれたら、そう思うと胸が苦しい。
こんな感情持つなんて思わなかった。
それもこんなに唐突にやってくるなんて思いもしなかった。
それでも、一度回りだした私の想いの歯車は止まることなんてできないのだ。
自分でもむちゃくちゃな性格だとわかっている。
わかっているからこそ、彼からのラビチャが開けないのだ。先が、見えない先が怖い臆病者なのだ。


それなのに、世の中というのは無常だ。


「次の撮影、六弥さんと一緒だから」


打ち合わせで訪れた事務所で唐突に告げられた。



「え?」


「この間の企画が好評でねぇ。今度はリアルな恋人同士のように撮るらしいよ」


恋人役に、私が。
一気に鼓動が加速する。
これはいけない、そう思っても感情は喜んでいる。だってまた会えるんだ。


「葛城さんもこれからもっと忙しくなってもらわなきゃね」


「頑張ります」


感情が揺れているのがバレないように気を付けながら返事をする。
それと同時に、頑張らなくちゃ、って自分を奮い立たせる。この間、テレビで見た彼のように輝けるように。



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