うーんと背伸びして | ナノ

 初めましての君

暖かくなって、日差しもきつくなってきた。
そんな初夏。
私は、撮影所のスタジオへと向かっていた。


「はー…」


タクシーで移動するのは、運動不足にならないように極力控えてるのだけれど、この暑さは少し堪える。
日傘を差していても、アスファルトからの照り返しがきつい。


「Oh,ダイジョウブデスカ?」


私に声をかけてきた人は、片言の日本語で声だけ聞くとちょっとだけ怪しかった。


「あ、はい。大丈夫で…」


そこで私の言葉は途切れてしまった。
声をかけてきた人を見ると、まるでそこだけ異国を切り取ったかのような美しい青年が立っていたからだ。


「それならいいデスが…無理しないでクダサイネ」


そう言って去っていく姿も素敵だ、と思った。
本当にあんな紳士的な人もいるんだな、って心の奥底から思った。
日本人にはできない心配りをスマートにこなせるその姿に、私はときめいたのだった。


「っと、こんなことしてる場合じゃないよね」


少し暑さも和らいだような気がする爽やかな気持ちを胸に、私は急いでスタジオへと向かった。



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