及川には自分のペースで戻るように言って、私は駆け足で体育館へと向かった。


「え、向こうがセットポイント!?」


戻ってすぐに目に入ったのはスコアボード。
24-22、うちが、烏野に、セットポイントを迎えられてる…?
それも、どうやらかき乱されてるのはこっち側のようで、飛雄がトスを上げた先にいたチビちゃんについていけず、金田一の横を通過していく。


ピー――――


鳴り響くホイッスル。
コートにすぐにでも駆けつけよとしていた私の足は、さっきの攻撃を見て止まってしまった。
あんな、危ないトスを、あの子は。


ぞわり


鳥肌のようなものが立つのを感じた。
ぽん、と頭に手を置かれる感覚がして振り向く。


「及川…」


そう呟く私に、いつもの笑顔を見せ監督の元へと向かう。私はその後ろをついていった。



「アララっ1セット取られちゃったんですか!」


及川はいつもと変わらない調子で監督に声かける。


「おぉ!戻ったのか!足はどうだった!」


「バッチリです!もう通常の練習もイケます!軽い捻挫でしたしね」


「苗字も付き添いご苦労だったな」


「ほんとです。もうこいつに怪我しないようキツく言っておきます」


そう言いながら及川を睨めば、肩をすくめる。


『キャーッ!及川さ〜ん!!』


他校生もいるというのに、品位の欠片もないのか、及川教人たちは。
その中にはこの前辞めさせられた元マネージャーたちもいて、懲りない人たちだな、と思いそっちに視線をやると思いっきり睨まれた。
おー、怖。
その黄色い声に相手校の方がざわつく。


「まったく…気をつけろよ、及川」


「スミマセ〜ン」


いつもの調子で軽く返事をする及川にため息をこぼす。


「向こうには「影山出せ」なんて偉そうに言っといてこっちは正セッターじゃないなんて頭上がらんだろが!」


「あはは…」


『及川さん無理しないでくださ〜い!』


声援の方に笑顔で答えれば、また歓声が上がり、私と岩ちゃんが苦い顔をする。
ほんとにコイツは…。


「やっほートビオちゃん。久しぶり〜育ったね〜」


「は!そうだ飛雄!及川邪魔!!」


私の視界を塞ぐように立っている及川をどかせば、こちらを見ている飛雄と目が合う。
ペコリ、と頭を下げる飛雄に飛びつきそうになれば、及川が首元を掴んで止めてきた。


「元気に“王様”やってる〜?」


「こら、及川、離しなさい、離してください!!」


ピースじゃない!まったく!


 


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