「ナイッサー」
「も一本!」
「ブロックあめーぞ!」
体育館の中に部員の声が響く。
新1年生も入ってきて今日もいいテンションだ。
一名を除いて。
「っはー・・・」
私は今年に入って何度目かわからない深い溜息をこぼす。
強豪校と名高いうちのバレー部の部員はかなりの数だ。
そうなるともちろん、仕事は増えるわけで。
今年もマネージャー入ってくれたのはいいけどまたしてもキャーオイカワサーン勢で頭を抱える。
「いらないんだよね、ほんと」
「あれ、ブラック名前登場じゃん」
そう言ってニヤニヤ現れたのは甘党男子の花巻。
こいつ、わかってて現れたなちくしょう。
「やだー、花巻さんそんなわけないじゃないですかー」
「うわ、普通にキモイ」
「ぶっとばすぞてめえ」
ちょっと他のマネージャーの真似をすればこれだ。
他の子にはいい笑顔で対応してるよね、君。お姉さん知ってるんだよ。
「まあまあ、そう怒らないで」
そう言いながら飲み終わったボトルを渡してくる。黙って受け取ればコートの方に踵を返していく。
花巻はいつもこうだ。私の機嫌が悪くなればこうしていつも足を運んでくれる。
松川も岩泉もそうだけど。
最初の頃は良かった。
優れた先輩に囲まれて、私もそんなマネージャーになりたい、そう思って少しずつ技術をモノにした。
それが、今ではどうだ。
私が2年になると及川目当てのマネージャー志望が増えてきた。
最初はそれでも数がいれば足しにはなるかと思ったけど、彼女らがするのはタオル渡し、ドリンク渡し、応援。以上。
初めは私も一生懸命教えようとしたけど、彼女たちにそんな熱意伝わる訳もなくて、だんだんと諦めてしまった。
そして、そのまま3年。
2年の時に入ったマネージャーが仕事することもなく一年をすごし、新しくマネージャーの1年も入ってもキャーオイカワサーンな彼女たちが仕事するはずもなく増えた負担分私に降りかかってきている。
「苗字先輩!お疲れ様です!!」
「おー、おつかれー」
なんだ。金田一忠犬か超可愛い私の癒し。
「どうだい、今日の調子は」
「ばっちりです!」
「なら良し」
そう言ってにかって笑えば金田一もにかって笑い返してくれる。ほんと天使。この子が及川と中学一緒だったとか信じない。あ、でも岩泉とも一緒か。把握。
「練習再開するよー」
「うーっす!」
そんな声が聞こえてきて私も仕事に戻る。
今日もなんだか疲れる予感しかしない。がんばろ
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