飛雄に絡みたいというのにこの男はことごとく私の邪魔をするのだな。ほんとに。
まあ最終セット直前みたいだし、お互いに集中切らしたら困るもんね。
「とにかくお前はアップとってこい!いつもより念入りにだぞ!!苗字も手伝ってこい!」
「はァ〜い」
「えー」
「文句言わない!」
監督に言われてしぶしぶ及川の後ろをついていく。
アップのお手伝いとか私たいしてすることないじゃん。
「名前、楽しそうだね」
「え?」
「トビオ見てる目が楽しそう」
柔軟手伝っていると及川が急にそんな事を言う。
確かに、楽しみだった。どんな風に飛雄が成長してるのか見たかったから。
でも、今は。
「純粋に敵としての、楽しみだよ」
「お、強気」
「期待してますからね、キャプテン」
「痛い痛い!痛いよ名前!」
ちょっと強めに押せば文句を言う及川に更に負荷をかけてやる。私からの愛情だ受け取れ。
その様子を見て、及川教の子達はブーブー言ってるように見えたけど、まあ気にしない。興味もないし。
及川のアップを見ている途中で、試合してるコートのほうをちょこちょこ見ていた。
WSの坊主の子、すごい強烈なスパイク打ってくるなぁ…とかチビちゃんよく飛ぶなぁとかそんなことを考えてる間に、あっという間にスコアは24-20。
「及川」
「ん、もう大丈夫」
しっかり汗をかいて準備万端な及川を見て頷いた。
「調子に乗るな!」
金田一のスパイクが決まる。
のっぽの金髪の子に弾かれて、ボールはコートの外に。
「金田一ナイスー」
「ナイスキー金田一ー」
声かけながらコート脇ベンチに着く。
「アララ〜ピンチじゃないですか」
及川が後ろから声かけてくる。
私は腕組みしてコートの中を見る。
「……………アップは?」
「バッチリです!」
親指と人差し指を合わせてOKマークつくる及川にため息。
どこまでチャラいんだこいつは。
この点差じゃセッター変えても仕方ないし、矢巾ちゃんに頑張ってもらうとして、ここで投入するとしたら。
監督と頷きあって、及川をコートに入れる。
『ピーッ』
選手交代の笛が鳴る。
国見と及川が交代し、ピンチサーバーで入っていく。
「ナイッサ」
「ナイッサー」
コート内に響く声。
烏野側のコート見ると坊主くんが中指立ててた。気持ちは分かるぞ。
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