テニス短編 | ナノ

 The past that cannot return

傍に居たいと、


ただ、それを望んだだけなのに


気が付けば、貴方は


私とは次元の違う人間になっていた


The past that cannot return




何時からかな、あぁ…景吾が有名になったくらいからかな。
いつの間にか、私たちは離れ離れになってしまったね。
傍に居るのは…隣に居るのは、私のはず、だったのに。
もう、会えなくなるのかな、きっと。
日々を増すごとに増える、私たちの間の壁。
仕方ない、よ。
所詮、景吾は学校のアイドル、私は、唯の生徒。
周りのファンからの中傷。もう、慣れた。
離れなきゃいけないこと、それもわかってる。
それでも…


「会いたい、よ…」


夜毎に想いは増して、会えない度に景吾を思って。
善からぬ噂、全部蓋をして、貴方の事思う。




“ピンポーン”


不意に鳴り響いたチャイム。…こんな夜遅くに誰?
私は玄関に行き、恐る恐るドアを開けた。


「ざくろ…」


そこには、軽く額に汗を掻いた景吾が居た。


「けい、ご…」


名前を呼んだ瞬間、引き寄せられ抱きしめられた。


「すまない…ほんとうに、すまない…」


息もできないほど強く抱きしめられ、その温もりに、涙が溢れた。


「寂しかった、よ」


背中に腕を回し抱きしめ返す。



何時の間に、こんなにも逞しく、男前になったんだろう。
そんなことを思いながら、部屋に入れた。
会えなかった分の時間を埋めるように、寄り添って――…。

END






prev|next

back

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -