笑顔の風は真上からっ | ナノ

港町の酒場


〜〜♪〜〜♪


ジャズ調の曲が流れる酒場。
あのあと行くあてもなく歩いているとこのお店のお姉さんに声かけられた。
自分で思っていた以上に不安そうな顔をしていたらしい。気がついたらこのお姉さんに事のあらましを話していた。


電車で来たのに朝起きたらその電車は愚か、駅がなくなってたこと。
スマホの電波が入らないこと。
見たことのない場所であること。


その話を聞いてお姉さんは不思議そうな顔をした。
なんと電車なんてないという。聞いたこともないと。
さらにいえばスマホもわからないというから見せると首を傾げていた。なんということだ。このご時世にこの若いお姉さんでスマホを知らないわけがない。
からかわれてるのか、そう思ったがお姉さんは本気で知らないらしいし、逆にこの村にはBarはなく酒場で。海賊や山賊が存在する。そんな珍しいもの持ってたら危ない、とまで言われてしまった。


・・・パラレルワールド。
ふと脳内にその言葉が浮かぶ。
学生の頃よく読んだ漫画がこういうジャンルが多かったような気がする。
頭が痛くなる。
頭を抱えてこれからどうするか考えているとお姉さんが唐突に言った。


「うちで働けばいいのよ」


にこり、綺麗に微笑むお姉さん。
お姉さんは酒場の店主で、従業員を探していたというのだ。
不審に思ったけど、これから先どうする?生きる術は?生活は?
そう言われてもう縋るしか無く、お姉さんの提案に乗るしかなかった。


「・・・お願いします」


そう言うとお姉さんは再び綺麗に笑った。
何ができるか問われ踊ることだと伝えると酒場で踊り子をさせてもらうことになった。
生演奏のバックミュージックで踊る気分は最高だ。そしてこの村の人はノリがいい。
踊ることが楽しくなった。



そんなある日だった。


「おー!ここかぁ噂の酒場ー」


頬に傷のある少年を先頭にぞろぞろと団体様が入店した。
お姉さんに聞いたら最近ここに船を止めてる海賊だという。
海賊、という言葉に背中がピンっと伸びる。
だって名前からして怖い。海賊。


「いらっしゃい」


お姉さんが笑顔で迎えるのにならって私も笑顔を浮かべる。
もうすぐ私の出番のため簡易ステージとなってる場所の近くで待機している状態だ。


「今からうちの看板娘の出番だから見てってよ」


看板娘って・・・!
嬉しさが駆け巡り、お姉さんに笑みを向けたあと、麦わら帽子をかぶった頬に傷のある少年に胸を張った。


さあ。ショーの始まりだ。

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