感嘆の声が漏れる。
「すげえ・・・」
ルフィの目は舞台上の女性に目を奪われていた。
自在に体が動く、とはこの事を言うのだろうかというほど、彼女の体からは音楽を感じられた。
「なかなかの姉ちゃんだな・・・」
同じように食い入るように見ているサンジは声をそう漏らした。
あのゾロでさえ、酒の肴に見ている。ナミもウソップもチョッパーもロビンも。
その場にいる全ての人が彼女に視線が奪われているようだった。
そんな錯覚さえ覚えるほど、その酒場は彼女の世界に染まっていた。
音が終わる。彼女が深々と頭を下げ終演を示した。
鳴り止まない拍手、指笛、歓声。
少し照れくさそうに、でも嬉しそうに笑う彼女に麦わらの一味も盛大な拍手と声援を送った。
「すごかったわね!あまり見ない踊りだったけど、彼女なかなかの人ね!」
ナミが興奮した様子で話す。
「オレ、あんなに動ける人、初めて見たぞ!」
チョッパーも目を輝かせて彼女の感想を述べる。
「あ、嬉しい」
タオルで汗を拭きながら現れたのはさっきまで舞台に立っていた彼女で、にこにこと笑いながら近づいてくる。
「お姉さんチョーよかったぜ」
「ふふふ、ありがとう」
嬉しそうに破顔する彼女にサンジはもうメロリンモードだ。
やれやれ、そう思いながらナミはやけに静かなルフィに首を傾げる。
通常なら興味を持ったものには話しかける彼がさっきから黙ったままだ。
「あ、自己紹介。ここで踊り子させてもらってますゆーりです。よろしく」
彼女の自己紹介に続いて、麦わらの一味も自己紹介する。
その際にサンジが何やらクサイセリフを言っていたが笑顔でスルーだ。
「オレ!ルフィ!」
最後まで黙っていたルフィがいきなり大きな声で名乗る。
ちょっと驚いたような表情をして、うん。とゆーりが頷く。
ルフィがにゅっと腕を差し出すとそれに笑顔で応え握手をする。
「あ、てめぇ抜けがけ!」
サンジもそれにならって手を出せば、サンジの手を握ろうとした、のだが。
ぺちん!
ルフィがその手を弾く。
「え?」
「は?」
驚いたのは二人だけじゃなく他の面々も驚いている。
「ルフィ、どうした」
ゾロが声をかける。
「なんでもねえ!」
「いや、なんでもねえってお前・・・」
「え、まさか」
「おいおい、嘘だろ・・・」
「ふふふ、やるわね、船長さん」
「え?え?」
「どうしたんだルフィ!」
意味がわからないという顔をするゾロ。
驚いた表情のサンジとナミ。
意味深に笑うロビン。
狼狽えるチョッパーとウソップ。
それと
(私なにかしたっけ・・・?)
状況が読み込めないゆーり。
困ったようにお姉さんを見れば、楽しそうに笑っていた。
これが出会い。
そして全ての始まり。
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