ハリケーン

突如起きた巨大ハリケーン

場所?そんなのもちろん

私 の 心 に


今日も例の如く屋上で授業をサボっていた時だった。
私のクラスはどうやら体育の授業だったらしく、外で皆走ってる(この寒い中でマラソンなんてやってられないしね)
あぁ…がんばってるなぁ…って他人事で思っていたら、不意に背後から声が聞こえて、慌ててタンクの陰に身を隠した。
どうやら先生じゃなくて、よくサボっているシリウスたちの声のようだ。
いつものように、ジェームズとかと居るのかと思ったら、その日はどうやら違った(あきらかにジェームズとかの声じゃなかったからね)
誰なのか、気になって、そーっと覗くと、優等生で有名なリーマス!因みに生徒会長!

(生徒会長でもサボったりするんだ!!)

なんて、軽くショック受けたりした。
その時に見た、シリウス相手にバカ話を楽しそうにするリーマスに心奪われた、とそんな単純な私。
勿論話したこともないし、接点なんて何もないけどとりあえずシリウスを使って近付こうと思います!


「シーリーウースくぅーん」


「ぱふぇ、お前が“くん”呼びすんな。キモイ」


「煩いよ駄犬」


「お前が言ったんだろ!それに駄犬じゃねぇ!」


そうやって突っ込んでくるシリウスを軽くスルー。
私は今それどころではないのだよ。


「そんなことどうでもいいけどさ、シリウスってリーマストと仲良かったんだね」


「あ〜、うん。幼馴染だしな」


「は?幼馴染なの?」


驚いて聞き返すとこくりと頷く。…周りの女子がキャーキャー煩い…ってか可愛いのか、こいつ。


「まぁ、それなら話が…「パッドフット―」


誰だよ私の話し遮った奴は!
そう思って振り返ると笑顔のリーマスが!
え…笑顔が眩しいッス!死ぬ!溶ける!萌える!

なんて、人が身悶えていると、シリウスが脛蹴った。
痛い!地味になんてもんじゃなくてかなり痛い!!


「気色悪い顔すんな」


「誰が気色悪いんじゃボケ!!」


思わずシリウスにガン飛ばしてしまった。


「まぁまぁ…いちごさん?だよね。パッドフットと仲良かったんだ」


「あ、こいつとはサボり仲間だしね」


「へー…」なんか、さらっと喋ってしまった!心臓はやい!めっちゃ緊張する!


「あー…ごめんな、ムーニー」


なんでシリウスが謝ってるのかはわからないけど、リーマスの微妙に拗ねてるような表情が可愛いから許す!!

…それから月日は流れて、シリウスの仲介もありリーマスと仲良くなった。
でも、なんでかな。
少し、物足りない自分がいる。
だって、あんなに大好きだったリーマスがいるのに、私の中にもやもやが残ってる。


「いちごさん?」


「え、あ、はい!」


そう返事して彼を見ると少し複雑そうな顔をしていた。


「シリウスがいないと、ダメ?」


「え?」


「いちごさんはいつも、シリウスを見てるから」


そう言われて、はたと気付く。
そうだ。最近の私は、リーマスよりも、あのバカのことを考えてる。


「ねぇ、いちごさんが今会いたい人は誰?」


「わたし、は…」


あぁ、もう、本当にバカだ。
今、気付いたんだ。
リーマスへの好きは、“偶像”としての好き、であると。
大好きだけど、それは“リーマス・J・ルーピン”というブランドであって、“彼”ではないんだ。


「ごめん、なさい…」


そう言うと、柔らかく微笑む彼。
それを見て、私は走り出した。



校舎の最上階、屋上の貯水タンクの上。
あいつのいつもの定位置。


「シリウス、」


「え?」


寝ていたシリウスは起き上がってこっちを見る。
少し、寂しそうな目で、私を見る。


「おまえ、ムーニーはどうしたんだよ」


「…置いてきた」


ねぇ、シリウス。あたしのこと、バカだって笑って?


「え?」


さっき気付いたこと、素直に伝えた。
ねぇ、これで気付いてよ。


「あたし、あんたが好きみたい」


そうだ、屋上に居る理由も
シリウスの言動を見てしまうのも
私はとうの昔にこいつに惚れてたらしい。


「あー、もう!」


そう言って抱きしめてくるシリウス。


「今更、嘘だとか聞かねぇからな」


「今更、言わないよ」


そう言って笑えば、近付いてくるシリウスの端正な顔。

うん、今はこの幸せ、噛み締めていたいかな。


END



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