Love of single night, serious love.

1人の夜は
暗闇に押しつぶされてしまいそうで
そんな夜には誰かを求めて
闇に出る


Love of single night, serious love


孤独を感じさせる夜。
いつもなら携帯のメモリに入ってる人を適当に呼ぶけど、今日はそんな気分じゃなくて、家を出た。
冬を感じさせる、冷たい風。
孤独を更に際立たせる、冷え切った空気。
俺は羽織ったコートのポケットに手を突っ込んで、寒さを紛らわした。
吐く息は白く、消えていく。



街のちょっと手前で、1人の女を見つけた。
この時間にあんなところに居るのは、俺と同じ顔のない人間。
感情を殺して、ただ、今だけを生きている、そんな人。


「なぁ…今暇か?」


いつも引っ掛けるときに言ってる言葉を、相手に投げかける。


「おにーさんは暇なの?」


慣れてるな、て思いつつその子に近寄った。


「暇じゃなかったらこんなとこ、いないだろ?」


「それもそうだね」


至極楽しそうに笑う女。




あのあと、当たり前のようにホテルに入り、体を重ねた。
コイツとは、初めてのはずなのに懐かしい感覚がした。ずっと昔に、触れたことのあるような、そんな感覚。
情事後の気だるさも、何故か心地よかった。


「ねぇ、帰んないの…?」


「…え、あぁ…そうだな」


準備の終えた彼女に言われて、俺も準備をする。




「じゃぁ、ありがとうね」


ホテルを出たところで、彼女と別れた。
自分の家に帰る彼女を見て、俺も家に向かって歩きだした。


この気持ちは
何?


この切なさは
何?


この苦しみは、何なんだ…。


家に帰っても忘れることのできない、アイツの温もり。
何時までも、胸のモヤモヤは消えず、胸を締め付ける。
こんなにも苦しい…。


「クソ…ッ」


さっき脱いだばかりの上着を再び掴み、もう一度外に出た。




アイツと別れたホテル前。そこに立って、俺は気が付いた。
あぁ…恋してるんだ、と。
…無意識に探してる。名前も聞くことなく別れてしまったアイツのこと。
こんなにも、心が、体が、アイツを求めてる。


「アホか…」


俺が呟いた言葉は、虚しく空へと消えていった。




あれからしばらく経った今でも、毎日アイツと会った場所に行った。
もしかしたら、いるんじゃないかって、淡い期待を抱きながら。
学生の頃のような、この感覚。忘れていたモノがふと甦り、それは少しずつ積もっていった。
今日も居ないようだと、帰ろうと思ったその時。


「まだ、居たんだ」


不意に掛けられた言葉に慌てて振り返った。


「お前…」


そこには、探していたアイツが立っていた。
俺は相手を確認すると、周りの目など気にせず、抱きしめた。




「毎日あそこに居たよね」


場所を近くの公園に移し、俺らはベンチに腰掛けた。


「知ってたのか?」


「だって、いつも居たもん。貴方を見つけたら帰ってたけどね」


なんか会っちゃいけない気がして、と言うコイツにそっと引っ付いた。


「なんで会ったらいけないと思たんだ?」


「だってシリウスさんはこの辺じゃ有名なイケメンだしね」


なんて、悪戯っぽく笑う。
「だから、会っちゃいけないって思った」


少し寂しそうな顔をして俯くから、包み込むように抱きしめた。


「俺な、あの日が忘れられなかった。ぬくもりも、声も、全部」


抱きしめたまま言った。あぁ…これが、求めてたものか、って実感しながら。




「確かに俺らは、あんな形から始まったけど」


少し、俺の声が震えた。


「それでも、俺はお前が好きだ」


ぬくもりが忘れられないのは、こんなにも愛しいから。
声が忘れられないのは、その声で俺を呼び求めてほしいから。


こんなにも、愛しく思える。


「私も、シリウスさんが好き」


そっと、俺の手に触れる手。


「なぁ…名前、教えてくれないか?」


「私の名前は…――」


その名前はこれからの2人に必要な、言葉。



END



あとがき

わざと名前変換なしにしてみました。
こんなんもありかなぁ…って。
これはケ●ストリーさんのRewindを聞きながら書きました。
前サイトからの転載。


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