愛してました。ずっと
いつから、かな。
トムが、遠い顔をするようになった。
私はあなたの隣に居たから、一番それを見てきた。
いつの間にか、あなたが笑わなくなって、私はそれを見つめるだけ。
それでも、私たちは傍に居た。
ホグワーツを卒業してからも。
「トム…」
愛を知らないあなたは私を愛することは無かったでしょう。
「どうかしたか?」
でも、名前を呼んでも機嫌を悪くしないトムに、私は少しの優越感と、誰よりもたくさんの愛を抱いていた。
くだらない、なんて貶すだろうから、一度も言ったことはないけれど。
「なんでもないわ」
「ぱふぇ、」
言いかけた言葉は聞かないフリ。
だってそれは貴方を足止めしてしまう言葉だから。
彼は闇の魔術から抜け出せなくなった。
多分、もっと前からそうなんだけれど、アブラクサスとオリオンと、あとたくさんの魔法使いを従えたトムの姿があったから。
一方の私は、どうやら「結核」というものにかかってしまったらしい。
咳がとまらず、治療の仕方もわからなかった。
トムは他の部屋で会議してて、私は寝室で横になっていた。
――元気だったら私もあそこに居たのかな。
そう思ってはみたけれど、答えは出ない。
日に日に悪化していくのが私はわかった。
トムに病気をうつすわけにはいかなかったけれど、傍に居たい気持ちが強かった。
…そんな私の、最期の願い。
聞いて、くれますか?
「ぱふぇ?」
「ねぇ、トム…」
手を握ってくれる彼に微笑む。
「私から、お願いがあるの」
「愛してるから、殺して」
他のものになんて、邪魔をさせないわ。
愛していました。ずっと
(終わるなら、貴方の手で)
私の最期は
静かに涙を流す貴方と、貴方の震えた声。
「Avada Kedavra…」
[*prev] [next#]