痛む

いつから、かな
君の隣が私じゃなくなっていったのは。


痛い、よ。
 心 が 。


ううん。違うかな。
もっともっと、奥のほうが。


痛む



気がつけば目で追っていた。
最初は唯のトラブルメーカーっていうか、そうだな、お調子者って印象。
その後は、女をいつも侍らせているプレイボーイ。
そんな碌でもない男―シリウス・ブラックとは何の関係もない唯の同寮生。
たまに談話室で見かけて。少しずつ少しずつ話すようになった。
今では、きっと誰よりもこの人の側に居る女かもしれないくらいには、仲良くなったんだ。


「ぱふぇ!」


「何、どうしたの」


「魔法史のレポ…「見せないわよ」…早ぇよ!」


こんな軽口が叩けるくらいには。
…だから、何時の間にか錯覚してた。
きっと彼は私を優先してくれるって。…特別な、女だって。


そんなある日、学校中って言っても他言じゃないほど大きな噂が流れた。


『あのシリウスが女を皆きったらしい』


勿論、私はそんな噂信じなかった。
だって、あのシリウスが。プレイボーイの彼が。
その思いは皆同じだったけど、泣いてる女の子達を見て事実なのだと理解した。
そして、それが私ではない誰か別の人であることも。


――何故かって?


そんなのずっとシリウスを見続けてきたから嫌でもわかってしまう。
最近視線で追いかけているのは、レイブンクローのビーターをやってるロレーヌ。
凄く優しくていい子なのは私も知っている。
そして彼女の横でだけ、彼の笑顔が輝くのも。


あぁ…叶わない。
(届かない、響かない。
小さく叫んだ。“愛して”)

あいして

脳内に響く、シリウスの声。
重なった二人の影。
背を向けて、小さく泣いた。

END
2011.10.27.


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