愛しちゃ、だめ
たまたま訪れたマグルの町。
小さな町の、長閑な空気。そこで過ごす人々も穏やかな人ばかりだった。
―自分が異物のように感じるほどに。
そんな町中にある小さな花屋。
普段なら見落としてしまいそうな佇まいではあるが、この町では小さく主張をしている。
そこには1人の女がいつも居た。
花を愛でるように見つめ、優しく柔らかく微笑む彼女。
そんな彼女を一目見てからというもの、毎日足を運んでいた。
「あら、レギュラスさん」
「どうも、ユウカさん」
名前をお互いに知ってからまだ数日だというのに、彼女のそばに居ると落ち着く日々が続いていた。
勿論、その感情もわかっていて、それでもその想いに蓋をし続けた。
(恋、なんて…)
浮ついた感情を持ってなどいられない。
そう、理解していたから。
いつものように過ごし、何も変わらないと思ってた。
「ユウカさん…?」
反応のない店。
奥で倒れている彼女。
「ユウカ!」
敬称をつけることも忘れて彼女を抱き起こした。
その瞬間、もう僕の感情は、止められなかった。
…誰から見ても、助からないであろう彼女。
…誰から見ても、異質な存在の僕。
「うぁぁああああ!!」
初めて、こんなにも大きな声で泣いた。
もし、今までに、こんな壁を感じることなく生きてこれていたら。
兄さんのように、生きれていたら。
そしたらきっと、僕も幸せになれたのかな…。
End
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