にっこり、微笑みながら何時の間にか現れた滝先輩が坪山くんを止めた。
「坪山、少し落ち着きな。君たちも、今の言葉、撤回してもらえるかな?」
「……」
いきなりの登場に驚いていた彼女達も、分が悪いと思ったのか、悔しそうに歯噛みしている様子が見てわかる。
そんなこと思っていたら、廊下から騒がしい声が聞こえてきた。
「今頃登場かい?跡部」
「煩ぇよ滝。…大丈夫か、ざくろ」
「は…い、すみません、景吾先輩」
いきなりの登場に少し私も驚きながらお兄ちゃんを見る。
「あ、跡部様…」
「何故このクラスに…?」
さっき私に罵声を浴びせていたなどと思えないほどの甘い媚びた声に胸やけしそう。
それを感じたのかお兄ちゃんも顔をしかめていた。
「ああ、妹が世話になっているようだからな」
様子を見に来た、と言うお兄ちゃんに周りが固まった。
…まぁ、萩先輩は一人可笑しそうに笑っていたけれど。
「え、兄妹なんですか。跡部部長と神田」
坪山くんが驚いたように言えば、二人で肯定した。
もう隠すのは無意味だ。
「でも、神田さんと苗字が…」
「神田は母方の姓だ。ざくろを利用しようとする奴がいるかもしれないからな」
蔑んだような目でクラスを見渡すお兄ちゃん。
それから逃れようと視線を反らす。
「フン、行くぞざくろ」
そう言って私の腕をひくお兄ちゃん。
…すみません、展開についていけないんですが。
助けを求めようと萩先輩を見れば苦笑いを零すだけだった。