#025
夕食もとらず眠り続け、目が覚めた、真っ先に目に入ったのは良く見知ったお兄ちゃんの顔でした。
そういえば、今日は集会の日だな…。
「お兄ちゃん、」
軽く揺すってお兄ちゃんを起こす。
目覚めのいいほうのお兄ちゃんはそれだけで起きれるから凄い。
「ん、ざくろ…」
「おはよう、お兄ちゃん」
「ああ、おはよう」
そう言って頭を撫でてくれるお兄ちゃんに、つい頬が緩む。
今日も、一日頑張れそう。
朝食を摂ってから、車に乗り学校へと向かう。
いつもと同じようで、今日から堂々とお兄ちゃんと一緒に登校できる、そう思ったら少し嬉しかった。
今まで勝手に自分でひいてた線を飛び越えてみたら、何も変わらない朝がこんなにも違うんだな、なんて思ったり。
…まぁ、いろんな意味で、だけれど。
校門にいつものように車を停めさせるお兄ちゃん。
時間が時間だから、登校中の生徒は少ないけれど、“親衛隊”の方々で熱狂的な人はもうこの時間には居たりする。
…勿論、今日も。
先輩達から突き刺さるような視線から逃げるように、慌ててコートへ向かった。
途中でお兄ちゃんの声が聞こえたような気がしたけれど、刷り込まれている恐怖にはやっぱり勝てなかった。
朝練も、午前授業も終わり、昼休み。
気がつけば、クラスの女の子たちに囲まれていた。
「今朝のこと、どういうつもり?」
「あんたが跡部様と釣り合うわけないでしょ。身の程知りなさいよ」
いつぞやの派手な子たちの罵りに、言い返そうとすれば
「口答え、しようっていうの?」
なんて、言われてしまえばもうどうしようもない。
「お前ら、なにやってんだよ」
少し教室を抜けていた坪山くんが、私達の間に入った。
「なによ、坪山、邪魔しようっていうの?」
「あんたもこんな子のお守りさせられてうんざりしてるんじゃない?」
「どうやって唆したのか知らないけれど、滝先輩の命令じゃ、従わない訳にいかないもんねぇ?」
最後の子が喋り終わると同時に、坪山くんが近くの机を強く殴った。
「俺は、滝先輩に命令されたからしてるんじゃねぇし、お前らみたいな低脳なことするつもりもない。それに…!!」
「はーい、そこまでー」