「ざくろ…?」
家に着いても動く様子の無い妹を見、安心しきった表情で眠っているのを見れば思わず笑みがこぼれる。
「坊ちゃん、お嬢様はお部屋に…「いや、俺が運ぼう」」
運転手の手を遮り、ざくろを抱えて家に入る。
「おかえりなさいませ、景吾坊ちゃま…?」
「すまないが、ざくろの荷物を部屋に」
「かしこまりました」
使用人長にそう伝え、部屋に向かう。
メイドが部屋の扉を開け、中に入りざくろを起こさないように気をつけながら、ベッドに寝かせた。
自分でも、ここまで大事な女はざくろ1人だと思う。
シスコンだ、と言われてしまえばそれまでだが。コイツは俺にとって何があっても守らなくてはいけない存在に、違いは無い。
「景吾坊ちゃま、ざくろお嬢様のお荷物、此方に置いておきます」
「ああ、すまない」
頭を下げて部屋を出る使用人たちを視線で見送り、ベッドに腰掛ける。優しく髪を撫でそれから、今日宍戸が言っていたことを思い返してみた。
(忍足、か…)
いつでもわからない奴だ、と思う。
もう3年目の付き合いになるが、アイツだけは、今回のことでも不審な点が多すぎる。
ざくろを好きだと言っていた忍足と、今の忍足がどうも合致しない。
鞍替えしただけなら、納得は行くが未だに俺や他の部員がざくろの近くにいた時に感じるあの鋭い視線の意味。いったい何を考えているのか未だにつかめねぇ。
(そもそもあいつは本当に東宮を懇意にしてるのか?)
向日や鳳とは少し違う、どこか狂気染みた感じに見える。
(思い過ごしだといいが…)
どこかすっきりせず、一日が終わった。
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