#022
部室にざくろちゃんが入るのを確認して、一息つく。
過保護、なんて跡部に言われたけれども、自分にとって大事な子を心配して何が悪い、なんて開き直ってみたり。
そんなこと考えていたら、なんだか複雑そうな顔をした宍戸と目が合った。


「滝は、“萩先輩”なんだな」


そう言われて、そういえば、と思い出す。
あの子…東宮さんが来るまでざくろちゃんは宍戸のことを“亮先輩”と呼んでいたな…。


「…まだ、恐いんじゃない、宍戸が。ほら、目つき悪いし」


「それは元からだ、ばかやろう」


「この間の定期テスト、俺のほうが上だったけど」


「そういう意味じゃねぇよ!」


いつものように、前のようにテンポ良く帰ってくる言葉に、お互い顔を見合わせて笑った。


「…まぁ、すぐ信用しろ、って方が無理あるよな…」


「あれ、自覚あったんだ?」


「…煩ぇよ。…それだけのこと、しちまってるんだもんな…」


段々、語尾に力が無くなっていく宍戸の肩を、軽く叩いた。


「まぁ、これから、でしょう?」


元の俺たちに戻るには。


「ああ」


力強く頷いた宍戸に、俺も満足して笑った。




そうこうしていると、背後から人の近付く音がした。


「アン?宍戸じゃねぇか」


「跡部か…」


「なんだ。俺様の登場に文句あるってのかよ、アーン?」


跡部はいつものように樺地を後ろに従わせ、悠々と近付いてきた。
何も不満は無いものの、宍戸と2人、溜息を吐いた。


「そういや跡部。忍足に何か言ったのか?」


「あ?」


「いや、あいつにしちゃ珍しい場所に居たからよ…」


「珍しい場所?」


そういう宍戸に少し疑問と、疑惑が沸く。
だって、宍戸が居たのは…


「いや、あのさ――」


宍戸の言葉に、跡部と2人、眉を顰めた。
今更、どういうつもりなのかな。
ね、忍足。


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