あの女からタオルとドリンクの入った籠を受け取ってコートに向かった。
アイツが話しかけてくるから、皆の練習見れなかったじゃん!最悪!!
舌打ちしそうになったけれど、此処は学校。何処で誰が見てるかわからないからそんなことできない。
鏡華は、何処でだってお姫様で居なきゃいけないんだから。
「朝練終了!」
コートから聞こえる景吾先輩の声!
今日もすてき!やっぱり景吾先輩がダントツよね!
「お疲れ様でした〜」
そう言ってコートから出るレギュラーにドリンクとタオルを渡す。
勿論、景吾先輩は最後に渡すよ!だって、お話したいもん。
「お、サンキュー!」
「いつもすまんな」
「ありがとうございます」
「ああ、さんきゅ」
「ウス」
「ふあ〜…」
岳人先輩と忍足先輩は笑顔で、長太郎先輩も宍戸先輩も笑って受け取ってくれた。
樺地先輩はいつも同じ顔だからわからないけれど、ジロー先輩は朝練に来てくれてたから、きっと鏡華に会いたかったはず!
そう思うと私の機嫌も一気に上昇するの。
準レギュラーは各自準備したものを飲んでた。当たり前よね、鏡華からもらいたいならもっと頑張ってもらわなきゃ!
「お疲れ様です〜」
景吾先輩にはとびっきり可愛い声で、甘えるように言うの。
だって私は可愛いんだから。
「ああ、すまない」
ほら、景吾先輩も私のだから受け取ってくれるの。あの女じゃなくて、私のを!
「毎朝練習前の準備、すまねぇな」
「大丈夫ですよ〜。だってそれがマネージャーの仕事じゃないですか!」
にっこり、そう答えれば、景吾先輩も満足そうに笑ってくれた。
あの景吾先輩が鏡華に!
「え…?」
そう思ってた私は気付かなかった。小さな小さな綻びも。
景吾先輩の、真実も。