#015
その夜はそのままいつものように過ごした。
あえて言うなら、お兄ちゃんがいつも以上に気にかけてくれていることかな。
今もお兄ちゃんの部屋で宿題を教えてもらったところだ。


「ありがとう、助かりました」


「ああ、もう遅いから早く休めよ?」


「はい、おやすみなさい」


そう言えばおやすみ、と返してくれるお兄ちゃんを見て、自室に戻った。
お兄ちゃんの優しさに、明日からも頑張れる気がした。




次の日、いつもどおりに家を出る。
今日もマネージャーとしての仕事がたくさんあるから。
でも、今までと違い、私の足は重たくなかった。


「おはようございます」


「おはよう、ざくろちゃん」


部室の前には、萩先輩が居て、朝練の準備を手伝ってくれた。
今日は放課後、試合形式で試合をする予定だから、対戦表の準備をしておかなくちゃいけないから、萩先輩の手伝いは助かった。


「すみません、手伝ってもらって…」


「いいんだよ。俺が好きでやっているんだから」


「ありがとうございます」


そうやって和やかに話していると、準備に没頭している時に来たらしい宍戸先輩が、レギュラーの部室から出てきた。


「今更点数稼ぎかよ」


「宍戸!」


蔑んだように言う宍戸先輩に萩先輩が詰め寄ろうとする。


「萩先輩!私は、平気ですから」


そう言えば渋々…と下がる萩先輩。


「宍戸、君はいったい何を見てきたんだ?」


「はぁ?」


離れて問いかける萩先輩に、宍戸先輩は疑問の声を漏らす。
その様子に、少し胸が痛んだ。




朝練の準備を終えて、ドリンクを冷やした頃に東宮さんが来た。


「あ、まだ居たの?」


その笑い方は、すごく歪んでてお世辞にも可愛いなんて思えなかった。
ジャージに着替え、


「東宮さん、朝の準備もマネージャーの仕事だって、教えてたよね?」


「はぁ?そんなのしたら、手が痛むじゃない。それに、ネットって重いし」


そう言って、私が作ったばかりのドリンクを持って出て行った。


――ねぇ、貴女段々爆弾踏んでいっているの、気付いているのかな?


なんて、思ってももう教えてあげないし。助けてもあげない。
私はここで皆を支えるのが仕事だから。


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