「まず最初に、俺とざくろの関係を皆に公表する」
一番目にあげられた言葉に、私は驚いた。
お兄ちゃんは、私がなんで別の姓を名乗っているのか、知っているはずなのに。
「ざくろ、今までお前に苦労をかけてきたことも理解している。それに、“跡部”と名が付けば傷を負うのはいつもお前だ」
だが、そう言って私の目を見つめる。
その視線に知らず知らずに背筋が伸びる。
その様子を見て、お兄ちゃんはふっ、と小さく笑った。
「お前に“跡部家”の人間として恥じる要素など、どこにもない。なんていったって、俺様の自慢の妹だからな」
いつものように自信たっぷりに、とうぜんだろう?と言わんばかりの態度。
「跡部はね、いつもざくろちゃんのこと、気にかけているんだよ」
クスクス笑う滝先輩に、止めに入るお兄ちゃん。
少し張り詰めていた糸が、緩んだ気がした。
「それで、“跡部”の名前で近寄ってくる奴らは全て、無視をしろ。勿論、東宮もだ」
あいつこそが、根源だからな。
そう言って不機嫌指数が一気に上がるお兄ちゃん。此処最近のレギュラーの様子を見てみれば仕方の無いことだけれど。
「それに、無視した相手が万が一、ざくろちゃんに手を上げる、なんてことになったら“必ず”俺と跡部に言うように。いいね?」
“必ず”の部分を強調する萩先輩に、「はい」と頷いた。というか、頷くしかなかった。
まるで立海の幸村さんみたいだったから。
それから、と滝先輩は言葉を続ける。
「絶対、レギュラーには近付かないこと。いいね?」
「ああ、そうだな。今はレギュラーのマネージャーではないから会う必要性もないだろう」
「でも、」
でも、あの子は何も仕事をしないから、レギュラーの皆に迷惑がかかる。
県大会を目前に控えた今、メンバーの負担になるようなこと、増やしたくない。
「ざくろ」
私の考えていることがわかったのか、お兄ちゃんは険しい顔で首を横に振った。
「お前が今しなくてはならないことは、お前を守ることだ。これは部長としてであり、生徒会長としてであり…何より、お前の兄として、だ。わかるな?」
「…はい」
「そうそう、もし負けたら彼奴らの責任なんだから」
「だから、お前が心配することは無い」
そういうお兄ちゃんと滝先輩にしっかり、頷いた。
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