#004
陽はまた上る。
昨日はあのまま、ざくろは俺の部屋で眠り、朝を迎えた。


「おはよう、ざくろ」


「…おはよう、ございます」


まだはっきり覚めてないのか眠そうにしている。
この時間が続けば、こいつは悲しむ必要が無いのに。


「どうする、休むか?」


「…いえ、行きます」


その瞳には、強さのような、諦めが写っていた。


準備を済ませ、早々と朝食を取ると、お兄ちゃんより早く家を出た。
校門の近くで車を降りると、人はまだ居らず、いつもの賑やかさは無い。


――今の私は、この時間が好きだ。


誰も、私を見ていない。
誰も、私へ中傷の言葉を無意味に投げつけない。
そんな、穏やかなこの時間が好きだ。


そう思っても、やらなくてはならないことがあるから、そう長くはその場に止まっていられない。
…誰が来るか、分からないし。
少し惜しい気もするけれど、私は足早に部室へと向かった。


男子レギュラーの部室の横にあるマネージャー専用の部屋に入ると、そこには見慣れたノートがあった。


…部日誌だ。


昨日、ミーティングが終わって飛び出すように部室を出たから、提出し忘れていたのだった。
もう1人のマネージャーである東宮さんが、当番だったのだけれど、彼女がこれを書いている事実など、どこにもないから必然的に私の仕事になっている。
監督のところに持っていく時間は無いので、後でお兄ちゃん…景吾先輩に渡しておこう。
そう思いながら、部活用のジャージに着替え、準備に向かった。


部室を出てコート整備、ボールの準備をする。
いつもレギュラーと少しの準レギュラーだけだから3面準備すれば問題ない。


「ふぅ…」


幸いなことにまだ人は居ない。
そう思ってネットを張る。


「おい」


いきなり後ろから掛けられた声に、必要以上に驚いてしまった。


「日吉、くん」


彼からの実害は無いものの、蓄積された他の人からの恐怖で足が竦む。


「俺は、お前のことをわかっている」


「…え?」


不意に告げられた言葉。
それは私にとって思いがけないものでどういう反応をしていいのかわからなかった。


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