#003
「ん…」


一人にしては広すぎる部屋。お気に入りの家具。日の光の入る窓に置かれたウッドチェアー。
そこに座り、洋書を読む兄。


「お兄ちゃん…」


呟くように言った其の声は、今まで読書にのめりこんでいたであろう兄の耳に聞こえたらしく、本を閉じ此方に向かって歩いてきた。



「起きたか…」


ベットの縁に腰掛け、頭を撫でてきた。その手つきは、前と変わらず優しいもので、涙が溢れた。


「ごめ、なさい…!!」


涙は止まることなく、次から次に止め処なく流れる。
そんな私を、お兄ちゃんは優しく抱きしめてくれた。


「何もお前が謝ることはない」


そう言って優しく、壊れ物を扱うようにお兄ちゃんは私の髪を梳くように頭を撫でる。
その指に、温かさを感じぎゅう、と強く抱きついた。


どれくらいの時間が経っただろう…。
涙は何時の間にか止まり、今は安堵感で胸がいっぱいだった。


「お兄ちゃん…」


「なんだ?」


お兄ちゃんは、私を何度も助けようとしてくれた…。
でも、お兄ちゃんの立場を考えると、それは部の雰囲気を壊すことになってしまう。
だから私は、学校では極力近寄らないようにしてきた。


「ざくろ、お前が苦しむ必要はない…。そうだろ?」


私はその問いに小さく頷くことしか出来なかった。
今はただ、お兄ちゃんの温もりを感じていたかった。


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