04

自称神様という不審者に対してのフラストレーション貯めながらも冷蔵庫の中空だし、お金は山ほどあるし、とりあえずスーパーに行くべ!って思いながら道を歩いていたけども、歩き出して数分、私はあることに気づいた。

「ここ、どこだべや…」

見たこともない道を歩き続けて今更、って感じなんだけど飛び出したしもうなんか戻れないような気がしてひたすら歩き続けた。

「いや…ほんとここどこだよ…」

「えー!君もしかして迷子なのー?」

早くも二度目の独り言がこぼれた時、後ろからいきなり声かけられた。
振り返った先には自称神様並みに胡散臭い男の人が立っていた。

「あ、怪しい人じゃないよー。俺、千石清純!清純って書いて“きよすみ”!こんなとこでこんな可愛いことで会えるなんて俺って超ラッキー!」

「ほんとに怪しくない人は自分が怪しい人に思われてる自覚なんてありません」

「おぅ…すごく心に響いたよお兄さん…」

そう言って胸を押さえて狼狽えるフリをする千石、とか言う人。
あ、そうだちょうどいい。

「じゃあ、そんな軽いナンパ受けてあげるから最寄りのスーパー教えてください」

「…結構言うのねお姉さん…」

そういいながらも、こっちだよ、って案内してくれるらしい千石さんは実はほんとに優しい人なのかと少し思いながらついていく。これで変なとこ連れて行ったら、彼の彼自身を使い物にならないようにしてやろうと思います。

「ほら、ここだよ」

案内された先には確かに【山吹マート】って書いてあって、ほ、っと息を吐いた。

「ありがとうございます、助かりました」

「うんうん、お礼は名前教えてくれたらいいかな!」

ニッ!って笑う彼に名乗ってなかったことを思い出す。

「…如月雪那です」

「そっかそっか雪那ちゃんかー。雪那ちゃんは最近この辺に引っ越してきたの?」

「まぁ。そんなところです」

「ふぅん…」

少し曖昧に流していたらちょっと鋭い視線で見られてしまいました。
怪しかったかな…いやでも初対面で『異世界から来たんです』はあまりにイタすぎるだろう…。

「なんならこの清純お買い物のお手伝いしちゃおーかなー、なんて」

「あ、荷物持ちですか、助かります」

「だからさっきから刺さってるよ?!言葉の棘が刺さってるよ!」

そんなこと言う千石さんをおいてお店に入る。青果コーナーから順に周りながら今日の夕飯何にしようか考える。
とりあえず無難なサラダとコンソメスープ、鳥の胸肉の蒸し焼きが食べたい。無性に。
そう思いながら必要なものをカゴに入れていこうとしたら、すごく自然な動きで私からカゴを取り紳士的にもエスコートしながら千石さんが持ってくれた。

…なんかすごくて慣れてるなぁ。そういうとこ。

そう思いながら容赦なく重たいものから入れていく。
それでもびくともしないこの優男、じゃない千石さん。よく見れば体格もしっかりしててなにかスポーツしてる人なのかもしれない。
まあ、ここでだけのめぐり合わせだから関係ないけど、と思って買い物を続けていく。

「…結構買うんだね…」

「え、ああ、うち何もないんで」

そう言って一通り買い物し終わってレジに並べば大量の食品。
…ちょっと買いすぎたかもしれないけど、まあそうすぐすぐ腐るわけでもないし、いいかな、って思っている。

「13608円になります」

「あ、はい」

あー、結構したなー。お米とかも買っちゃったからだなー。まあいいか、自称神様のお金だし。

「これ雪那ちゃんだけで持って帰るの…?」

「え、あー、はい」

まあ持てない量じゃないし、いけるかな。って思っていると千石さんは全力で首を横に振った。

「いやいやいやいや!さすがにこの量は無理でしょ!最初の約束通り荷物持ちやるよ」

「え、いや、家知られたくないっていうか…」

「ひどっ!」

そう言えば落ち込む千石さんに異様に説得され、近くまで、っていう約束で持ってもらうことにした。

他愛ない話をしながら進む帰り道。
学校の帰りとかこんな感じになるといいなー、なんて思いながら帰る。
千石さんは話が尽きなくて居ていて楽しい気分にさせてくれる。さすがこういうことに慣れてる人だ。なんて思った。

「あ、ここなんでもう大丈夫です」

マンションの前に着くと千石さんから荷物を受け取った。

「じゃあまたどっかで会おうね!」

「はいはい、そうですね」

「最後までドライな対応の雪那ちゃん嫌いじゃないよー!」

ばいばーい、なんて言って別れ、彼の背中を見送り荷物を持って部屋を目指す。
…よかった。荷物持ってくれる人いて。これは無理だ。買いすぎた。




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