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 交差×想い

たまにはさ、
君の腕でゆっくり寝たい!


交差×想い


最近、彼と同棲始めました。
…いや、彼の押しが強くて頷くしか出来なかったんだけどね。


「寒いなー」


此処最近、某有名サッカーチームの彼は一緒に住んでても時間が合わず、一緒の布団で寝る、という感覚は全く無い。
起きたらたまに横に居るんだけど、それまでは1人で。
あたしが起きても、シゲはまだ夢の中、なんてことも多い。
二人で寝転がってちょうどいいサイズのこのベットは、1人で寝るにはかなり広い。よって


「寂しい、」


なんて、小さな独り言を溢してしまうことも増えてきた。
それに加え、最近では一緒に住まない方がよかったんじゃ、なんて思ってしまうほど。
今日も確か練習と取材で遅くなる、って言ってたし、きっと帰ってくる頃には日付が変わっているだろう。


「う〜…」


いつも、帰ってくるまで待つように頑張ってはみるけど、次の日の仕事を考えると日付が変わると寝てしまう。
そんな生活が結構長いこと続くと、本当に辛くて。でも、やっぱり離れたくないから我慢する。
…なんて、いい女しながらもちょっと泣いたりして。


「早く帰ってきなさいよねー、シゲのくせにー…」


なんて、ぼやきながら目を閉じた。




「ただいまー…」


日付が変わってそー、っと帰ってくる。
いつもこの時間はリュカが寝とるから。
なるべく音を立てんように玄関から部屋に入り、リビングに向かう。
俺のために準備してある夕飯は冷たくなって、何時の間にか使い回されているメモ紙に、いつもの言葉。


“ちゃんと食べること!!”


素直やないリュカは、こうやって俺のことを気遣ってくれとる。
レンジで温め、1人夕飯を食べ始めた。




リュカと一緒に暮らし始めてどれくらいが経ったやろう。
なかなか会う時間が無いことが寂しくて、リュカに頼み込んで(それこそ土下座して)一緒に生活しだしてから数ヶ月。
最初の頃は、そんなぎょうさん試合もないし、練習だけやったから一緒に居る時間があって、他愛も無い話をしたりしていた。


だけど、今は。


試合も決まり、勝ち星を重ねるうちに取材やらなんやら、サッカーとは関係のない仕事も増えてきた。
そんなんをこなしているうちにだんだんリュカと話すことが無くなっていった。
勿論、その原因は俺なんやけども…。


(寂しい、な)


帰ってきたらリュカは寝とって、起こさんように気をつけながら布団に入る。
俺が次の日ゆっくりしとっても、彼女には仕事があるから仕事に行ってしまっている。


(しゃあない、なぁ…)


なんて、割り切っている風に見せておかんと、結構ギリギリのところにおったりする。



そうこうするうちに、夕飯も食べ終わり片づけを済ませ寝室に行く。
風呂に入る気分になれず、着替えを取ってシャワーで済ませた。


「さっむ…」


そんな小さな言葉が漏れるほど、この時期の空気は冷たい。
俺は急いでベッドへ向かった。


(ん?)


リュカの顔を見ると、頬に濡れた痕。
泣きながら寝たんか、それとも寝ながら泣いたんか分からんけれど、彼女にも寂しい思いをさせとることに罪悪感を覚えた。


「ごめんな…」


小さく呟いてみるけど、今更離れるなんて出来やしなくて。
俺の我侭やけど、でもやっぱり一緒に居りたい。


「…ん、シゲ…?」


目を擦りながら起きた彼女の頭を撫でてやる。


「悪い、起こしてしもた?」


多分、今の俺、超情け無い顔してる。
それに気付いたのかリュカが小さく横に首を振った。





何か聞こえた気がして目を覚ます。
ベッドの脇に座り、此方の様子を見ている人影。
勿論、この家には居れるのは雄一だけなので、その正体も彼だ。


「シゲ…?」


少し眠い目を擦りながら、久しぶりにちゃんと見る彼の顔。


「悪い、起こしてしもた?」


少し困ったように笑うから、あたしは小さく首を振った。


「おかえり、なさい」


久しぶりに口にした言葉はじんわりあたしの胸に広がって、なんだか泣きそうになった。


「ただいま、リュカ」


彼の口から紡がれるあたしの名前は、なんだかいつもより柔らかく感じて笑みが零れる。



体を起こして時間を確認する。
日付は変わっていたけれど、久々のシゲになんだか嬉しくなって目が覚めた。
幸い、明日は休日だしね。


「今帰ってきたの?」


「今、っていうか、さっきやな」


「そっか」


そうやって話してると、シゲがベッドに上がってきて、さっきまで広く感じたベッドが、少しだけ狭くなった。


「明日は?」


「ん、オフんなった。リュカは?」


「明日は日曜日だよ」


そう言って笑えば、「そうやな」って笑う。



久しぶりに、シゲと過ごせる休日かぁ…。


「久しぶりに一緒に居れるな」


なんて、まるで思ってたことが読まれたみたいでつい笑ってしまった。


「え!?俺なんか変なこと言うた?」


焦るシゲが面白くて、さらにからかってみた。


「らしくないこと言うなぁーって」


そう言うと、自分の言葉に恥ずかしくなったのか「うっさい、」なんて照れ隠し。
そんな姿も可愛くて、普段ではできないんだけど、ぎゅぅって抱きついてみた。


「リュカこそ、らしくないやん」


悔しかったのか、そう言い返してくるシゲにまた笑う。
それを見て、彼もつられたように笑った。




久しぶりに和やかな時間を過ごしていると、シゲが欠伸を噛み殺した。


「そろそろ寝たら?」


「んー、そうするわ」


布団に潜り込むシゲに引っ張られて一緒に入る。


「あは、甘えん坊さん」


「うっさいで」


なんて、今更かっこつけても、耳まで真っ赤なその顔は隠せてなくて小さく笑った。


「おやすみ、シゲ」


「ん、おやすみ」


ちいさくリップ音をさせてキスされた。
なんだかこういうのが久しぶりすぎてむず痒い。
そっと彼の胸元に顔を埋めるように隠した。
背中に回された腕が暖かくて安心して、また瞼が重くなる。


さっきまで感じてた寂しさ(罪悪感)は何時の間にか消えていた。


End



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