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 冷えた心と求める心

もう、あの頃には戻れない
原因は俺だって、わかってる…。


冷えた心と求める心



いつのまにか擦れ違ってしまった。
いつからか、お互いを愛することを忘れてしまった。

…原因は、俺だってちゃんとわかっとる。

でもな、今はマジで後悔してるんだぜ?
俺にはリュカしかいない。別れても、リュカしか、いないから。


…今更気づいても遅いんだけどな…。




ほんの出来心、だった。
たまたま島で酒を飲みに行った時に会ったイイ女と、そんままヤった。
あの時は、まさかこんなことになるなんてこれっぽっちも思てなかった。


「ただいま…」


朝帰りした日。
俺は何も無かったかのような表情をして、最愛の恋人、ざくろの待つ宿の部屋に帰った。


「…寝てる、か」


少し苦笑しながら柔らかい髪を撫でてあげると、ざくろはゆっくり目を覚ました。


「ん…サンジ…?」


「ただいま」


「ん…おかえり…」


頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細め再び眠りに付いた。




彼女は、元コック。有名なホテルの料理長を務めていたくらいだから、そうとうの実力者。
それに加えて、戦うことにも長けていて、非の打ち所の無いくらい、完璧な女だ。
今のリュカは、誰もが認めるうちのクルー。
環境は、俺とあんま変わらないはずなのに…。
それなのに、俺はどうしようもない過ちを犯してしまった。




あの日からしばらく経って、どこか彼女の行動がおかしなった。

…前みたいに、甘えてきてくれない。

…前みたいに、喋らない。

…前みたいに、触ることも減った。

でも俺は、それはリュカが疲れてるから、って勝手に解釈した。
どんなにきつくても、疲れてても、俺を拒絶することなんてなかったのにな…。


「なぁ…リュカ?」


そんな環境に耐え切れなくなった俺は、リュカに手を伸ばした。


「触ら、ないで…」


触れようとした手は払われ、目にいっぱい涙を溜めたざくろに睨まれた。





「どうした…?」


「嘘つき」

“嘘つき”


たったそれだけの言葉なのに、俺は気づいてしまった。
リュカが知ってる、って。
何故知ったのか、とか、誰から知ったのか、なんてどうでもいい。
俺の頭に浮かんだのは、絶望やった。
放心状態の俺を、尻目に彼女は此処から出て行った。




それから、どのくらいの月日が流れただろう…。
俺の視界から、色が消えた。
ただ、鮮やかに写るのはルフィやウソップと騒ぐアイツの姿。
…でも、いくら病んでいてもやらなきゃいけない事はある。
俺は、根性で乗り切った。そうするしか、なかった。


なぁ、リュカ。
俺はお前が本当に好きなんだ。
あの日のことはきっと、一生掛けないと償えないことだと思ってる。

その償いを、貴女の傍でさせてください。
もう二度と、過ちは繰り替えさないって、誓うから―――……。



END



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