回る、廻る
03
そんな終点の見えないことを考えていると、目の前にことり、とカップが置かれた。


「ココアで良かったかの?」


「え、あ…はい」


ほんのりと湯気の上がるソレは、微かな甘い香りをさせて自然と手が伸びた。


「君の名前をまだ聞いとらんじゃったな」


「あ…藤堂 鈴香といいます。よろしくお願いします…」


ついぺこりと頭を下げれば、アルバスもつられて頭を下げた。


「さて、本題といきたいところじゃが…少々此処は騒がしすぎたかのう?」


そう言って見回すアルバスに続けば、此方の様子を伺う人、聞き耳立ててる人で、先程まであった空席が全て埋まってしまっていた。
それほどに人気があるのか…この爺さん。


「とりあえず、場所を変えねばのう…」


そう言って何時の間にか自分の分の飲み物を飲み干しているのをみて、私も慌てて流し込んだ。
咽る私の背中を優しく撫でてくれる手に安心して、すぐに治まった。


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -