09
クィディッチの興奮冷めぬまま、大広間に向かう。
足取りも軽くスキップでもしそうな勢いだ。
打ち解けられなかったスリザリン生とも少し距離が縮まったように感じる。私の勘違いでなければ、だけど。
「ずいぶん楽しそうだな、鈴香」
少し冷たい耳馴染みの声が聞こえる。
「シリウス…」
「スリザリンで楽しくやってるようじゃないか」
棘のあるその言い方に少しカチン、となりながらも表面を取り繕った。
私が選んだ道ではあるけれども、家族にこういう言われ方されるのは結構辛い。
「鈴香も清々してるんじゃないか?落ちこぼれのお兄様と離れられて嬉しいって」
「そんなこと・・・!」
「あるだろ。俺は家の裏切り者だ、スリザリンに入らなかった時点で、そう決まってる」
「たとえ周りがそうであろうと!シリウスはシリウスに変わりはないでしょ!!」
私の剣幕に周りも何事かと人だかりができる。
こんなの、望んでなんかないのに。
「シリウス、なーにやってんだこんなとこで」
「いやジェームズ。俺なんかを相手にできねえっていう子猫がうるさくてな」
絡んできたのはそっちでしょ・・・!という気持ちはぐっと抑える。
「じゃーな、優秀な方のブラック様」
「・・・っ」
私は悔しくて、何も言えなかった。
スリザリンにいるから優秀、グリフィンドールにいるから落ちこぼれ、なんて私が思うはずがないのに。
身寄りがない私を引き取ってくれた今の家族は、本当の家族のように愛している。それなのにどうしてシリウスには伝わらないの?
悲しくて、悔しくて、どうしようもない気持ちを抱えたまま、私は寮に戻った。