回る、廻る
12
「ブラック・鈴香」


ここまで連れてきてくれた女史の先生の声で、シリウスから視線を外す。
どうやら数回私の名前を呼んだあとだったようで、早くしなさい、と目が語っている。
慌てて帽子のある椅子のところまでいけば、新入生の顔が見渡せた。

そこにはジェームズがグリフィンドール!って口パクで言ってるのが見えたし、リーマスもピーターも、それに同調するように頷いていた。
ぶつかったあの男の子はこっちを見ていなくて、少し、胸がツキンと痛んだ。


『考え事は終わったかね?』


帽子の声が聞こえる。どうやら、考え事も見透かされているようだ。


『君には素質が有り余っておる。どこの寮にいっても最高の成績が残せるだろう。私はグリフィンドールをすすめるがどうかね?』


“グリフィンドール”


確かにそこに行けば、シリウスと同じだからきっとやっていきやすいだろう。

でも、ふと浮かんだのは、私を本当の娘として育ててくれているオリオンさんとヴァルブルガさんのことだった。
ブラック家は、スリザリンに入らなくてはならない。
なんだかそのような感じがして…


『ほう…家のためにスリザリンを選ぶのか…』


「あそこは、私の唯一の居場所で、帰るべき場所です」


『そうか、ならば何も言うことはあるまい』


そう言って、帽子は息を吸い込んだ。


「スリザリン!!」


帽子を脱ぎ、椅子から降りると絶望、ってまではいかないけども、落胆しているジェームズたちの姿。
そして…冷たい眼差しでこちらを見てくる、シリウスの姿。


(ごめんね、シリウス)


私には、彼らを落胆させることはできない。

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