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それから、レギュラスの案内で屋敷の中を歩いて回った。
「ここは兄さんの部屋だ」
「…お兄さん?」
まだ見ない家族に首を傾げる。
「あぁ、兄さんは多分出かけてるよ。いつも遅くならないと帰ってこないんだ」
「坊ちゃん、そちらは…」
レギュラスの話を聞いていると不意に背後から声が聞こえた。
声のする方を見れば、少し老いた妖精?みたいなのがいて、思いっきり私の方を睨んでいる。…うん、さっきのレギュラスみたい。
「クリーチャー、今日からブラック家に来た鈴香姉さんだ」
「お嬢様であらせられましたか。クリーチャーはクリーチャーと申します」
「よろしくね、クリーチャー」
クリーチャーの目線に近付こうとしゃがむと、彼は更に腰を深く折った。
見たことも無い生き物に、少し興味を持って触ってみると、面白いくらいにクリーチャーの肩が震えた。
「姉さんは、屋敷しもべを見るのは初めて?」
「屋敷しもべ?」
「はい、クリーチャーのことでございます、お嬢様」
下げていた頭を上げ、少し顔を輝かせたクリーチャー。
…この子、とっても可愛いわ。
「クリーチャーはこのブラック家にお仕えしている屋敷しもべ妖精なのでございます。家の中のことはなんなりと、このクリーチャーめにお申し付けください」
そういう彼は、仕事に誇りを持っているらしく、自信たっぷりに言った。
「ふふふ…頼もしいのね。何かあったらクリーチャーに頼むわ」
「はい、お待ちしております、お嬢様」
クリーチャーの頭を優しく撫でてあげると、彼は恥ずかしいのかわからないけど目を細めた。