09
「母上、どうかされたのですか…?」
扉を開け、広間に入ってきたのは少し幼い少年。
「まぁ、レギュラス。こちらにいらっしゃい」
“レギュラス”。そう呼ばれた少年は私の顔を見て不審そうに歪めた。
「母上、こちらは…」
「お前の姉になる、鈴香だ」
お父様はレギュラスくんにそう告げ、私の肩に触れた。
挨拶をしなさい、そう小さく囁かれ、頷いた。
「藤堂、鈴香です。いきなりでごめんなさい」
「もうお前は藤堂じゃないだろう?」
「あ…すみません。お父様」
そんな会話をしていると、やっぱりまだ疑われているのかレギュラスくんは眉間に力が入ったままだ。
「レギュラス・ブラックです。…よろしくお願いします」
…なんだか前途多難な感じ…かな。
お父様の言いつけで、私を部屋まで案内してくれるらしいレギュラスくん。
…もちろん、会話は皆無。少し息苦しく感じてしまうほどの沈黙に、そろそろ耐えれそうに無い…。
「あの…」
「部屋はこちらです。中でお話を聞かせてもらってもいいですか?」
そう問うレギュラスくんに、否定できそうもなくて頷いた。
此方の人は紳士的な人が多いと聞いてたんだけれど、そうでもないらしい。
少しだけ、レギュラスくんが苦手になりそう。
部屋に入ると綺麗にしてあって、生活するには申し分ない広さだった。
「貴女は何者なのですか」
部屋に入り扉を閉めるや否や、レギュラスくんはそう言った。
「私は…」
それから事の始まりから全て話した。