06
目の前に置かれた紅茶はフルーツティーらしくほのかに良い香りが漂ってくる。
ゆっくり口に運ぶと、部屋のドアがノックされた。
「アルバス、先程手紙がつきまして遅くなりました」
「ミネルバ、此方がその手紙の少女じゃ、名前は…」
「鈴香、藤堂 鈴香と申します」
「まぁ、貴女が…。よかった…」
初対面というのに、なんだか彼女と会うのは懐かしい気持ちがした。
優しく微笑む彼女は私を見て安堵したかのような表情をしたのだ。
「私はミネルバ・マクゴナガル。この学校で変身術を教えています」
私が座っている椅子の隣に腰掛けたマクゴナガル。
優しく重ねられた手に少し落ち着いた。
「さて、鈴香。今後のことなのじゃが、此処ホグワーツに通ってもらおうと思っとるのじゃが、いかがかね?」
「此処に、ですか?」
「何、無理にとは言わんよ。君さえよければ、の話じゃ」
今更戻れる家も無い。
頼れる身内だって、いない。
それならば…と思って私はすぐ返事をした。
「よろしく、おねがいします。ダンブルドア校長」
「それでは、君の親戚に、ちょいと連絡せねばなるまい」
「え?」
私は首を傾げた。
親族は居ないと思っていたし、知り合いだって、そう居ないはずだ。
「鈴香をブラック家へ?」
…ブラック?
「そうじゃ。向こう次第じゃがの…。それにあそこには同い年の子もおる。その方が多少気も休まるじゃろう」
聞いたことも無い家名にますます首を傾げる。
アルバスに問おうにも、あの半月眼鏡の奥の瞳を見たら、何も言えなくなった。