高1の11月。片思いをしていた男の子から、

「なあ、試しで俺と付き合ってみないか?」

と言われた。彼が言うお試し期間というのは、どれ程の長さのことを指しているのかは分からなかったが、その間に、彼の隣に並ぶに相応しい女になろうと思った。彼は好きでもない女の子とお試しであろうとも付き合える人ではないと思うから。

恋愛なんてというより、付き合うのも彼がはじめてだったから、必死で男の子が喜ぶ方法なんかを勉強した。あざとく思われないように、それでいて、嫌われないように。可愛くて良い彼女だと思ってもらえるように頑張った。

彼は強いバレーボールをするために猛勉強して、白鳥沢にやってきたという。バレーボールをしている彼のことが好きだったので、嫌われてはいけないし、生活の何もかもをバレーボール優先で構わないと伝えた。何度か、本当に良いのか?もっとわがままを言ってくれと言われたけれど、それも、きっと試されているのだろうと思い、あまり、わがままを言わなかった。

かと言って、あまりわがままを言わないと"都合の良い女"になってしまうと恋愛の指南書に書いてあったので、私が考える限りで、彼が簡単に叶えられるようなわがままを言うようにした。

"コンクールの前に電話したい""週に何回かは一緒にお昼ご飯が食べたい"
そうやってお願いすると、彼は優しく笑って願いを叶えてくれるから、すごく嬉しかった。そして、私は、どんどん彼のことを好きになった。

いつになったら、お試し期間が終わって、本当のお付き合いになるのだろう。ずっと、ずっと悩んで、そうして1年が経ってしまった___。

そんな中、白鳥沢学園高校男子バレー部が、宮城県の予選決勝でまさかの敗退という結果が耳に入る。丁度吹奏楽部のコンクールが重なっていたので応援に行けず、彼の様子は分からない。だけど、きっと落ち込んでいるであろう彼氏をどう励ましてあげるべきかと頭を抱えた。至上最難関の壁が今、やって来た。でも私は、吹奏楽部のコンクールは終わっていたものの、習い事でやっているピアノの方のコンクールが、まだ残っていた。臆病な私は、それを言い訳にあまり連絡できずにいた。

だけど、とりあえず、彼の様子だけ知っておこうと、彼の親友にラインを送った。





















高1の11月。片思いをしていた女子に、

「なあ、試しで俺と付き合ってみないか?」

と言ってみた。彼女は音楽が好きでコンクールに向けて直向きに努力しているらしく、恋愛なんてどうでも良さげだった。しかし、品行方正で美人な為、男は放っておかない。それを、わざと利用して虫除けになるよって言ったと思う。そしたら、OKの返事が返ってきた。

お試しなんて口から出たような出任せのようなものだ。本気で俺の物にしたいと思って、俺に出来ることならなんでもやってやりたいと思った。

だが、やはり彼女は恋愛に対して興味関心が薄いらしく、あまり、わがままを言ってくれない。ようやく言ってくれたわがままは、"コンクールの前に電話したい""週に何回かは一緒にお昼ご飯が食べたい"なんて可愛らしいものばかりだったが、俺は俺のできる限りで彼女を支えた。

もっと彼女に触れたい、恋人らしいことがしたい。そう思って思い続けて1年が経った。不器用な俺は、嫌われたくないが為に、それを上手く言葉に出来ない。

そんな時、彼女がコンクールではじめて金賞を逃したと言う知らせが舞い込んできた。

どうしたら良いか分からず、とりあえず俺は、親友にこの思いを聞いてもらいに行くことにした。



20201121
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