ピッ、ピッとひたすらCCMの操作音が室内に響く。その指さばきは見事なもので、確かに操作にLBXの反応が追いつかなくなるのも納得だ。
ぼんやりとその様子を眺めていたら、気が済んだようで、ジンくんはこちらへとやってきた。

「ありがとう名前。充分だ」
「本当?よかったー…!」

ジ・エンペラーのCPUを改良し、装甲も強化した。武器の威力も、性能も、今までの戦闘データから分析し、よりジンくんのバトルスタイルに合ったものにしたつもりだ。
しかしそれはあくまでデータ上の話であって、実際に使ってみてもらわないとわからない。そんなわけで、動作テストをしてもらっていたのだ。
どうやらジンくんのお眼鏡にかなったようなので、安心してため息をつく。ここ2日ばかり徹夜続きだったので、少し目が霞んできた。思わずあくびをすると、ジンくんにくすりと笑われた。軽く頭を撫でられ、その手はそのまま名前の目の下の隈をなぞる。それがなんだかくすぐったくて身を捩らせると、すまない、という謝罪の言葉が聞こえた。

「なんで謝るの?」
「…隈ができるほど無理をさせてしまった」
「やりたくてやったんだから気にしなくていいのに」
「…ありがとう」
「どういたしましてっ」

そう。聞くのであれば謝罪の言葉よりも、感謝の言葉の方が何倍も嬉しい。改良されたジ・エンペラー、もとい、エンペラーM2とジンくんの顔を見比べて笑う。
そんな名前の笑顔につられるように、ジンくんも微笑みを浮かべる。和やかな空気が流れ始めた部屋に、CCMの着信音が鳴り響いた。

「あれ、義光さまからだ」
「おじい様から…?」
「うん、なんかお屋敷のセキュリティをちょこっと変えて欲しいって…うー、わざとザルにするの嫌だな…」
「おそらく、侵入者をおびき寄せるためだろう」
「侵入者…?ジンくん、なんか知ってそうな感じだね」

名前の疑問に、ジンくんは答えなかった。でも、どこか嬉しそうなその横顔から想像するに、先日アングラビシダスで戦ったという相手が来るのかもしれない。
セキュリティシステムのプログラムを組み直しながら、もしかして、と聞いてみる。

「その侵入者さんたち、ジンくんの部屋に行くようにすればいい?」
「できるのかい?」
「誰に言ってるんですかー、名前ちゃんにお任せあれー!」

寝ていないためか若干怪しいテンションで答えると、無理はしないでくれ、とジンくんに言われる。
それでも、ジンくんや義光さまのためだったら何だってがんばれてしまうのだ。キーボードを操作する指が早くなる。
いつの間にかじいやさんが来て、コーヒーを2つ置いていった。苦味が徹夜明けの身体に染み渡る。よし、もうひと踏ん張りだ。
そういえば、ジンくんに言っていないことがひとつだけあった。

「ジンくん」
「何だい」
「せっかく新しくしたんだから、アンリミテッドレギュレーションで戦ったらダメだよ!」
「…あぁ、わかったよ」

20110716

海道邸でのジンくんとのバトルがアンリミテッドじゃなかったのが印象的でした@ゲーム

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